日銀は20日、2013年に始めた異次元緩和は金融機関の貸出残高を約30兆円押し上げる効果があったとの試算を明らかにした。利ざやが縮小した一方で、金利の低下や景気改善などの効果から残高が伸び、収益減に歯止めをかけた面があったと分析した。

過去の金融緩和を検証する「多角的レビュー」の一環で「金融緩和が金融システムに及ぼした影響」と題した論文を公表した。

長い目でみれば1999年から2006年までは不良債権処理などで貸出残高が70兆円近く減った。その後の低金利下では不動産向けなどを中心に貸し出しは増えてきた。論文によると、13年以降の残高について異次元緩和がなかったと仮定した試算値は、実績より30兆円程度少なかった。

貸し出しの増加は「経済活動を下支えする効果だけでなく、利ざや縮小による貸出金利益減少の影響を軽減し、金融機関のリスクテイク余力を維持する効果があった」と評価した。

過度な利下げが景気にマイナスに働くという「リバーサル・レート」の議論を巡っては「過度な金融緩和が金融仲介活動を阻害するメカニズムが表面化していた証左はみられない」と言及した。

一方で、今後の金利上昇局面でのリスクも増えていると指摘した。利ざやが縮小し、それを補うためにリスクテイクを積極化させてきたためだ。大手行と地銀の国内の資金利益は過去25年間で3分の2に減少した。

論文では、収益力が低下し自己資本比率が下がっている金融機関では、金利上昇(債券価格は下落)時に保有する債券の評価損が「金融仲介活動の制約になることが考えられる」と注意を促した。

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