三菱UFJフィナンシャル・グループ本社ビル=東京都千代田区で2020年10月、浅川大樹撮影

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券会社2社が顧客企業の非公開情報を無断で共有していた問題で、金融庁は24日、3社に金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。同じグループの銀行と証券会社間での情報共有を制限する「ファイアウオール(防火壁)規制」に違反し、公正な競争を阻害したと認定した。国内最大手行が行政処分を受け、業界の信頼低下は避けられそうにない。

 処分対象は、三菱UFJ銀行▽三菱UFJモルガン・スタンレー証券▽モルガン・スタンレーMUFG証券――の3社。金融庁は再発防止に向けて経営責任の明確化や情報管理体制の強化を求めており、3社は業務改善計画を7月24日までに提出する。

 取引先企業の情報を悪用する優越的地位の乱用は認められなかったなどとして、親会社のMUFGへの行政処分は見送った。金融庁は「経営改善に向けた取り組み状況などを総合的に考慮した」と説明した。一方、MUFGには問題の原因分析などを求める報告徴求命令を出した。

 14日に行政処分を金融庁に勧告した証券取引等監視委員会によると、2021~23年に三菱UFJ銀の役職員は顧客の不利益を防ぐために設けられたファイアウオール規制に反し、9社の非公開情報を無断で系列証券2社と共有。2社はその情報を利用して営業活動などを行った。

 主なケースでは、顧客企業が株式売り出しに関する情報を系列証券と共有しないよう銀行側に繰り返し求めたが、銀行の専務執行役員(当時)は系列証券の副社長に売り出しの時期や金額を伝えていた。当時の銀行頭取は不正の可能性に気づいたが、専務から「事実上(顧客企業から)黙認されている」と虚偽の報告を受けていた。また、銀行には認められていない有価証券取引勧誘の違反もこれまでに28件見つかった。

 MUFGなどは24日、「ご迷惑、ご心配をおかけし、心よりおわび申し上げる。行政処分を厳粛に受け止め、再発防止に向けて実効性の高い対策を策定する」とコメントした。具体的な改善計画の内容や社内処分について検討する。

 林芳正官房長官は24日の記者会見で「我が国を代表する金融グループで顧客情報の不適切な授受が行われていたことは大変遺憾」と指摘。「こうした事態が二度と発生することのないよう、抜本的な改善対応に取り組む必要がある」と述べた。【成澤隼人】

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