京セラはスマートフォンやタブレット端末などの通信機器事業で2026年3月期に売上高の8割を法人向けとする方針だ。東京都内で開いた事業説明会で明らかにした。個人向けの端末から撤退を進めており、飲食店や医療機関など法人顧客を中心に成長を目指す。
まず24年の秋以降に法人向けのタブレットとスマホの計3機種を発売する。医療機関や飲食店、物流関連などの現場で活用しやすい機能を搭載する。記者会見した鈴木克彦執行役員は「通信機器事業の売上高は非公表だが、24年3月期に63%だった法人向けの販売比率が26年3月期には80%に高まる見通しだ」と話した。
タブレットの「ディグノTab2 5G」は前面に近距離無線通信(NFC)機能を搭載する。クレジットカードやマイナンバー保険証などを読み取れる。飲食店で客が卓上で注文や決済をするほか訪問医療の現場などでの活用を見込む。京セラはこれまでに外食大手などに注文用のタブレットを提供しており、新機種は26年3月期に数十万台規模の販売を目指す。
業務用スマホの「ディグノSX4」はSIMフリー版とWi-Fi専用モデルの2機種を用意した。ぬれた手による操作や病院や工場内で安定した通信をしやすくする機能をつけた。医療機関や物流現場ではバーコードリーダーや決済など複数の端末を持ち歩くことが多いといい、複数の機能を1台のスマホで置き換えて業務効率化を支援する。
業務用のアプリなどのソリューション開発にも力を入れる。代表例が人工知能(AI)画像解析技術で薬の錠剤を識別したり食事の量を把握したりするシステムだ。病院などに患者が持参した薬をスマホのカメラで撮影してAIが種類の特定を助ける。食事をとる前と後にお膳を撮影することで摂取できた栄養の種類や量を推測するシステムも開発している。
通信技術を生かし、ミリ波で高齢者などの安全を確保するシステムも26年3月期の製品化を目指す。各ソリューションの開発では技術や販路を持つ外部企業とも連携する。
京セラは個人向けスマホの開発を23年3月期に終了し、販売も25年3月期中に終える方針だ。ただ高耐久スマホの「トルク」や一部のフィーチャーフォン(従来型携帯電話)など、法人向けに開発しながら個人にも販売する機種は一部今後も残る。法人比率を徐々に高めながら成長を目指す。
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