カスタマーハラスメントへの対応方針を発表したANAの宮下佳子・CS推進部部長(左)と、JALの上辻理香・CX推進部部長=東京都港区のANA本社で2024年6月28日、佐久間一輝撮影

 顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を巡り、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は28日、共同で対応方針を策定したと発表した。両社は「航空業界全体に広げ、毅然(きぜん)とした対応を進めたい」としている。

 両社によると、2023年度、ANA、JALともに約300件のカスハラが報告された。これまで明確な基準がなく、現場で判断に迷い、従業員のメンタルに不調が出て休職や退職を余儀なくされる例もあったという。ANAの宮下佳子・CS推進部部長は「接客部門のスタッフに聞くと、体感としては増えている。実際にはきちんと報告がされておらず、我慢しているケースも多々あると思う」と指摘する。

 方針は、カスハラについて、優越的な立場を利用した顧客らからの「義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為」などによって、従業員の就業環境が害されることと定義。暴言や暴行、セクハラのほか、「SNS(ネット交流サービス)で拡散させる」などの脅迫的な発言、「家まで謝りに来い」「土下座しろ」などの実現不可能な要求など九つの事例に分類し、注意喚起したにもかかわらずエスカレートした場合は、組織的に毅然とした対応を取るとしている。

 今回の方針について、JALの上辻理香・CX推進部部長は「(カスハラは)周囲のお客さまにも不快な思いをさせてしまう。(客と従業員の)双方にとって大切だと考えている」と話した。【佐久間一輝】

ANAとJALが定めた主なカスハラ行為例

▽暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗(ひぼう)中傷

→容姿をやゆする発言、能力を否定する侮辱的な発言

▽脅威を感じさせる言動

→「SNSで拡散させる」や反社会的な勢力をほのめかす

▽過剰な要求

→「家まで謝りに来い」「土下座しろ」や理不尽な理由での慰謝料要求

▽暴行

→ものを投げる、飲み物をかける、傘を振り回す

▽業務に支障を及ぼす行為

→常習的な同じクレームの繰り返し

▽業務スペースへの立ち入り

→事務所やオフィスへの押し入り、居座り

▽社員を欺く行為(明らかに事実と異なる言動)

→不正な搭乗券の利用、手荷物の破損に関する虚偽申告

▽会社・社員の信用をきそんさせる行為(SNS投稿など)

→事実でないことや事実を誇張した虚偽を含んだ内容の流布

▽セクハラ(盗撮、わいせつ行為・発言、つきまといなど)

→性的な言動、つきまといにより身体的または精神的に苦痛と感じる行為

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