シャッターが下り始めたアブアブ上野店の前は閉店を惜しむ来店客らであふれた(30日午後6時ごろ、東京都台東区)

商業施設運営のアブアブ赤札堂(東京・台東)は30日、ファッションビル「ABAB(アブアブ)上野店(同)」を閉店した。上野を代表するファッションビルとして中高生を中心に人気を集めたが、建物の老朽化で耐震化などの措置が必要になるため継続を断念した。運営会社によると開業は戦後すぐの1945年。復興や高度経済成長、バブル崩壊、新型コロナウイルス禍など幾多の出来事を経た78年の歴史に幕を閉じた。

午後6時間際、店前の路上は閉店の瞬間に立ち会おうと駆けつけた客らであふれかえった。アブアブの関係者が「ありがとうございました」と声をあげるとともに、シャッターが下り始めると、居合わせた来店客などから「ありがとう」「お疲れさま」といった声がそこかしこであがり、割れんばかりの拍手も起きた。

アブアブ上野店が約80年の歴史に幕を閉じた(30日、東京都台東区)

アブアブ上野店は地下1階、地上7階の8フロア構成。カジュアル服「ハニーズ」など女性向けのファッションブランドが数多く出店しており、上野を代表するファッションビルとして渋谷のビルなどと並ぶほど中高生を中心に人気を集めたビルだ。上野は駅周辺にアトレ上野や松坂屋上野店、上野マルイ、パルコヤ上野といった商業施設が立ち並ぶ一大商業地区だ。

アブアブ上野店は前身となる赤札堂が1945年に開業。70年には赤札堂から業態転換して若者向けファッション中心のアブアブとなった。2000年代には地域客の利便性向上をはかろうと「ユニクロ」や100円ショップの「ダイソー」などが出店した。

直近の23年には観客が演劇に没入する「イマーシブシアター」も導入し、時代に合わせたテナントで集客を続けてきた。

アブアブは一時期数十店舗を展開していたが、現在は同店が唯一残る店舗となっていた。今後は都内に約10店舗を構えるスーパーマーケット「赤札堂」に注力していく。跡地の活用方法は未定という。

アブアブ上野店の前は店のシャッターが下りてもなお人が絶えなかった(30日、東京都台東区)

閉店を惜しむ人の声は絶えない。子供連れで来店した公務員の40代女性は「地元で生まれ育ち親と来たり1人で来たりした。子供の買い物ができると思った矢先の閉店で寂しい。復活を待っています」と話した。

都内の50代主婦は「アブアブはみんなの(人生の)歴史にも刻まれている。ものすごく寂しい」と目に涙を浮かべた。「(商品は)手に届きやすい価格で買い物の楽しさを味わってきた。その楽しみがなくなると思うと寂しい。これからどこで買い物すればいいか分からないほどだ」と語った。

30日は朝まで北海道・小樽にいたという千葉県の50代会社員の男性は、アブアブの閉店を見届けるために成田空港から駆けつけたという。「20年前におしゃれな先輩に連れられてきた思い出がある」と明かした。最後に「『どうもありがとう』と言いたい」と付け加え、閉店を惜しんでいた。

(中島芙美佳)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。