国税庁は1日、2024年分の路線価を発表した。全国の上昇率トップ10のうち、大阪市中心部は3地点がランク入り。背景にあるのはひっきりなしのマンション需要だ。高層マンションの建設が相次ぎ、中古も含めて価格は右肩上がり。「億ション」が当たり前になりつつある。
「高い建物がどんどん建っていく。この20年でまちの景色がだいぶ変わったね」。こう語るのは、大阪市西区の肥後橋で飲食店を営む男性(52)だ。大阪の玄関口・JR大阪駅から南に約1キロのエリアで、税務署別の最高路線価で全国3位の上昇率(19・3%)を記録した。
おしゃれなカフェや雑貨屋が並ぶ西区は若者を中心に人気を集め、人口が増えている。1月には大阪メトロの肥後橋駅近くに34階建て197戸のタワーマンション(タワマン)が完成。平均価格は約8000万円で、1億円を超える部屋も数多く販売された。
高い伸び率となったのは、周辺エリアとの相乗効果もありそうだ。北側の堂島川沿いで、タワマン3棟が相次いで建てられている。いずれも40階以上で戸数は1300超え。24年秋にはJR大阪駅北側の再開発区域「グラングリーン大阪(うめきた2期)」の一部開業も控える。
グラングリーン大阪では46階建てのタワマンが象徴的だ。25億円で売り出された最上階の部屋を含む第1期販売の146戸は24年2月に完売し、平均価格は約2億3200万円だった。こうした活況ぶりは隣接する福島区に波及し、全国7位の上昇率(16・4%)に達している。
「連日、問い合わせが相次いでいます」。タワマン専門の不動産会社「TOWERZ」(大阪市)の取締役、芝崎健一さんが好調ぶりを語る。
同社によると、大阪市内で現在販売中の新築タワマンは17棟。建設予定は11棟に上る。モデルルーム見学の予約を開始すれば10分足らずで満席となるという。ある新築マンションでは、数年の間で販売価格の坪単価が200万円近く上がった。
中古市場も活発だ。同社の独自集計によると、23年に成約した大阪市内の中古タワマン(70平方メートル)の平均価格は7192万円で、10年前と比べて2倍近くになった。芝崎さんは「10年ほど前から上昇傾向にあったが、この1、2年の価格高騰は怖いぐらいだ」と話す。
不動産経済研究所の調べでは、23年度に近畿2府4県で発売された新築マンションの平均価格は4935万円で、バブル期の1991年度(5464万円)に次ぐ高値となった。1平方メートル当たりの平均価格(83・4万円)は、すでに「バブル超え」を記録した。
同研究所大阪事務所の笹原雪恵所長によると、マンション価格の上昇は原材料費やエネルギー価格の高騰が影響。大阪市中心部で駅近の限られた土地を巡る「争奪戦」も相まって価格を底上げしているという。
高値で販売されても高年収の共働き世帯やファミリー層を中心に人気だ。海外の富裕層の投資目的の購入も相次いでおり、笹原所長は「JR大阪駅を中心とした再開発の余波が周辺地域にも及んでいる。マンション価格は上昇基調で推移していくだろう」と展望を示す。【井手千夏】
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