新紙幣 どこで受け取れる?
各業界の対応状況は
JR各社は
バス会社 対応間に合わないケース相次ぐ
最先端のホログラム技術導入
約2年前から印刷開始
専門家「紙幣の信用力 保っていくことが必要」
▽りそなグループのうち、埼玉りそな銀行は初日から約100店舗の窓口や両替機で新紙幣の出金や両替が可能だとしていて、早ければ午前中に新紙幣を手にすることができるとしています。渋沢栄一の出身地が埼玉県深谷市であることから、地域を盛り上げるための対応だとしていますが、各店舗で紙幣の数には限りがあるとしています。▽三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は、初日は混乱を避けるため、新紙幣を取り扱う店舗はごく一部にとどめるとしています。また、ATMについても、みずほ銀行が初日は新紙幣の充てんよりも窓口での対応を優先させることを決めているほか、三菱UFJ銀行と三井住友銀行もATMへの充てんを積極的には行わない方針です。3行は、4日以降は順次、全店舗で新紙幣の取り扱いを始めるほか、ATMへの充てんも順次、進めるとしています。▽また、ATMを全国に2万7000台以上設置しているセブン銀行も、初日は試験的に一部のATMに新紙幣の充てんを行いますが、当面は旧紙幣の数が多い状態が続きそうだとしています。
横浜市神奈川区にあるラーメン店では2日昼すぎ、券売機を取り扱っている企業の担当者が訪れ、店内の券売機1台を更新する作業を行いました。
この店では支払い方法は現金のみで、新紙幣の発行に備えようと3月中旬に券売機の更新を発注していましたが、企業側が多くの依頼を受けていて、注文から3か月あまりたった7月2日、更新が完了しました。
中島正昭代表は「ギリギリでしたが、なんとか間に合って安心しています。昼どきに両替となると大変なこともあるので、迷惑をかけることなく、スピーディーに対応できるようになってよかったです」と話していました。
新紙幣への対応状況は、業界によってばらつきが出ています。財務省が5月にメーカーの業界団体に行った聞き取り調査では、新紙幣の発行開始までに、大手コンビニ・スーパーのレジは8割から9割程度、鉄道の券売機は8割から9割程度で更新が進むほか、路線バスの料金箱などでは6割から7割程度で更新が完了する見通しです。一方、コインパーキングなどの自動精算機や飲食店の食券など券売機は5割程度にとどまるとみられるということです。
鉄道のうち、JR各社の対応状況です。
JR東日本管内の券売機約4000台について、新紙幣対応のための更新作業などをすべて終えたということです。3日以降、どの券売機でも新紙幣は利用できるとしています。JR東海管内の駅にある約700台の券売機、それに乗り越し分を支払う自動精算機は対応を終えたということです。「ICカード」に現金をチャージするための「入金機」の一部では更新作業を続けるということですが、「入金機」が設置された駅には必ず「券売機」があるため、利用者には支障はなく、券売機を使ってICカードに現金をチャージして欲しいと呼びかけています。JR北海道券売機を設置している114駅のうち、69駅は対応を終えたとしています。券売機が設置された19の無人駅はいずれも対応は完了していません。また「簡易券売機」も、すべてで対応は完了していないということです。JR西日本駅員のいる駅では少なくとも1台は新紙幣に対応できるようにしたとしています。一方、無人駅の券売機については、今年度中に更新作業を進めるとしています。JR四国四国4県にある108駅のうち91駅で対応が完了したということです。残りの駅の対応は決まっていないとしています。ただ、ワンマン車両内で運賃を払う両替機については、今年度中には新紙幣への対応を終える見通しです。JR九州管内の駅にある約600台の券売機の半数ほどで、改修を終えたということです。来年12月ごろまでに全券売機で対応を完了する予定です。新紙幣が使えない駅では、降車駅で運賃を支払ってもらうなどの対応を促すということです。
路線バスを運行するバス会社でも、運賃箱や両替機の更新作業が進められていますが、納入の遅れや更新費用の負担から、間に合わないケースが相次いでいます。
北海道中央バスは、保有する900台のバスについて運賃箱の部品が確保でき次第、順次、更新作業を進めるとしています。西日本鉄道(福岡市)ではグループ全体で約2400台のバスを保有していますが、8月下旬から更新作業を始める予定です。現金が使われる頻度の高い路線から入れ替えを進めて、2026年3月末までに完了させる計画だとしています。
熊本県内を走る一部のバスはまだ対応しておらず、今後更新を進めることにしています。
熊本都市バスでは、担当者が新しい紙幣が使えないことを示すステッカーを運賃箱に貼ったり、ポスターを掲示したりする作業を行いました。
九州産交バスと産交バスでは、一部の高速バスをのぞき全路線バスで新しい紙幣に対応しています。熊本バスは来月から順次更新し、熊本電鉄は年内をめどに更新する予定だということです。
全国の中小のバス会社では費用の負担が重いとして、当面運賃箱などの更新を見送るところもあります。業界団体によりますと、運賃箱などの入れ替えには1台100万円から200万円ほどの費用がかかるといいます。新紙幣への対応が間に合わないバス会社では、乗車の際に旧紙幣を準備しておくことや、キャッシュレスで決済できるICカードに現金をあらかじめチャージしておくよう呼びかけているケースもあります。
今回のデザイン変更は、偽造防止の強化や誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の導入が主な目的です。偽造防止という点では、最先端のホログラム技術を導入しました。斜めに傾けると画像が立体的に動いて見える仕組みとなっていて、傾け方によって肖像の顔が左右に向きを変えたり、額面の数字の色合いが変化したりします。
国立印刷局によりますと、この技術をお札に採用するのは世界で初めてだということです。また、「すかし」には肖像の背景に緻密な線で構成した模様が施されています。
ユニバーサルデザインという点では、日本の紙幣になじみの薄い外国人なども利用しやすいよう、額面の表記を漢字よりも数字を大きく目立つようにしています。また、目の不自由な人でも指で触って紙幣の種類が分かるよう、凹凸のある11本の斜線=斜めの線を印刷しています。一万円札は左右の中央、五千円札は上下の中央、千円札は右上と左下にあります。
新紙幣の発行に向けて、政府・日銀は、およそ2年前から本格的な印刷を始めるなど準備を進めてきました。
日銀は6月末時点で一万円札を29億枚、五千円札を3億枚、千円札を20億枚のあわせて52億枚を準備しています。来年3月までにはさらに22億8000万枚準備し、現在発行されている紙幣の46%にあたる74億8000万枚とする計画です。日銀によりますと、20年前の前回の新紙幣の発行の際には1年間で6割程度が新たな紙幣に切り替わったということです。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、「一番大きな意義は紙幣の偽造防止だと思う。技術が進歩すると、紙幣の偽造技術も進歩していくので偽札が出やすくなってしまう。偽造を防いで紙幣の信用力を保っていくことが必要だ」と指摘します。そのうえで「キャッシュレス化は今後もどんどん進行していくとみているが、キャッシュレスに適応できない人もいるほか、大規模な災害やシステム障害などのときは使えなくなる可能性がある。現金の需要、紙幣の需要がゼロにはならない以上は、新しい紙幣の発行が必要になってくる」と話しています。また、事業者の中で対応が間に合わないケースが相次いでいることについては「直前に需要が殺到しメーカーが対応できない事態を避けるためにも、政府が主導して、より計画的に切り替えを促す取り組みが必要だった。早めに切り替えると一定程度の補助金を出す措置がもしあれば、円滑な切り替えと負担の軽減にもなったと思う。公共交通機関での対応が進んでいるかどうかを行政がチェックする体制も、これから先必要になってくるのではないか」と指摘しています。
鈴木財務大臣は3日の閣議のあとの記者会見で、「キャッシュレス化の進展は見られるが、紙幣は今も主要な支払い方法として利用されている。災害発生時やキャッシュレスの利用が困難な人のための決済手段として必要だ。ニーズに応じて紙幣を供給していくことが重要だ」と述べ、発行の意義を強調しました。一方で、券売機や自動販売機などで新紙幣に対応するための作業が続いていることについては、「民間事業者に負担が生じているのは承知している。一方で、偽造に対する抵抗力を強化し、経済的損失を未然に防ぐことや安全な取引を確保するなどメリットについても、負担とあわせてご理解いただきたい」と述べました。
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