ポルトガルに拠点を置く再生可能エネルギー会社「EDPR」は2日、東京都内で記者会見し、福島市に出力44メガワットの大規模太陽光発電設備(メガソーラー)を2025年9月にも稼働させる計画を発表した。「ノーモア・メガソーラー宣言」をしている市は困惑している。
EDPRは、ポルトガル最大の電力会社EDPの100%子会社。EDPRのアジア太平洋地域最高経営責任者(CEO)と同地域のビジネスCEO、日本ディレクターの3人が日本外国特派員協会で会見した。
計画では、福島市松川町水原のゴルフ場跡地で建設が進んでいたメガソーラーの事業を購入し、東京ドーム約12個分にあたる60ヘクタールに約6万3千枚の太陽光パネルを設置するという。
もともとは茨城県の不動産会社が着手し、開発に必要な環境アセスメントの手続きを22年に終えていた。ゴルフ場跡地は山裾にあるが、開発により約7ヘクタールの樹木を伐採していた。
不動産会社がゴルフ場事業に注力することにしたため、土地は所有したまま、同年に事業権をシンガポールの再エネ関連会社に売却。EDPRが同関連会社を子会社にした。
福島市の施設を皮切りに、EDPRは日本国内に再エネ事業を広げる考えだ。国内には26年までに、太陽光発電を中心に200メガワット以上の開発をめざすという。福島市の設備についての事業権の購入費や事業費については明かさなかった。
ただ、市内には出力1メガワット以上のメガソーラーが建設中を含め26カ所あり、市民はメガソーラーに敏感になっている。このため、市は昨年8月に「景観が損なわれるような山地への大規模太陽光発電施設の設置をこれ以上望まない」とするノーモア・メガソーラー宣言を出した。
国内参入の最初に福島市を選んだ理由について、日本ディレクターのジミー・リー氏は会見で「福島第一原発の事故の後、福島県が積極的に再エネに転換すると宣言した。その一助になりたいと考えた。このプロジェクトで年間2万1千トンのCO2削減に寄与できる。地域のみなさんに恩恵をもたらせる」と説明した。
また、ミゲル・フォンセカCEOは、ノーモア宣言を出した自治体への参入について「懸念を抱くのは承知しているが、元ゴルフ場という、何の生産活動もされていない土地での開発だ。100%安全な形で事業に取り組むし、他地域でも役に立てることがあれば事業を展開していく」と話した。
一方、福島市はこの日の会見を報じたネットニュースで、EDPRの計画を初めて知ったという。環境課の担当者は「まさに寝耳に水。事業者が次々と変わり、困惑している」と話した。市はEDPRに対し安全対策の徹底を申し入れる考えだ。(岡本進)
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