帝国データバンクは4日、人手不足が原因の倒産件数が2024年上半期(1〜6月)に前年同期比7割増の182件だったと発表した。年間ベースで過去最多だった23年(260件)を上回る勢いで推移している。4月に時間外労働規制が適用された物流や建設業界を中心に、働き手を確保しづらい小規模事業者の倒産が目立つ。

帝国データが倒産(法的整理のみ)となった企業のうち、従業員の離職や採用難など労働力不足が要因となった件数を集計した。

1〜6月は182件と23年1〜6月(110件)に比べ65%増えた。24年3月は年度末の事業整理などが増えて49件と、13年度の集計開始以来単月ベースで過去最高件数となった。4〜6月の合計も87件と前年同期より約3割多く、倒産ペースは落ちなかった。創業または設立から30年以上の企業は全体の36%にのぼった。

業種別でみると時間外労働の上限規制が4月に始まった建設が前年同期比18%増の53件、物流が1.8倍の27件といずれも上半期としては最も多かった。

帝国データバンクによると、建築工事会社の豊工務店(京都市)は5月31日に京都地裁の破産手続き開始決定を受けた。公共工事の減少に加え、近年は大工職人の廃業増加で外注費用が膨らむなど資金繰りが悪化していた。

規模でみると従業員数10人未満の倒産が全体の79%を占めた。10〜50人未満が14%で、50人以上は7%にとどまった。総務省が実施した23年の労働力調査では、転職希望者が初めて1000万人を超えた。人材の流動性がますます高まる中、退職者の穴を埋められず、事業継続が困難になる中小零細企業が増加傾向にあるという。

一方で人手不足を感じている企業の割合は6月に正社員が50.1%、非正社員が28.2%と、4月からそれぞれ0.9ポイント、1.9ポイント改善した。各社は賃上げや人事制度の見直しなどで働き手の確保に動くほか、業務の自動化を進めることで人手不足をカバーしている。

帝国データバンクの旭海太郎副主任は「物流や建設など人手不足が深刻な業界でも、SNS活用やオフィス環境の改善を通じて人材を獲得している企業は少なくない」と指摘する。人手不足を背景に人件費の上昇も続いており、人材確保への取り組みの成否が企業の持続性を左右しそうだ。

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