写真はイメージ=ゲッティ

 深刻な人手不足が続くITエンジニア。人材派遣会社ヒューマンリソシアが世界各国のITエンジニアの平均年収(2023年)を集計したところ、日本は3万6061ドル(23年の平均レート換算で約507万円)だった。データが取得できた72カ国中26位。米国の半分以下で、中国よりも安い水準だった。

 トップはスイスの10万2839ドルで、日本の2・8倍。2位の米国は9万2378ドルだった。24位の中国は3万6574ドルで、日本をわずかながら上回った。各国の年収をドル換算して集計したため円安も影響している。しかし、現地通貨で比較した場合でも、日本は円建てで前年比0・4%増とほぼ横ばいだったのに対し、米国は3・6%増、ドイツはユーロ建てで2・6%増。日本の伸び率は、主要7カ国(G7)の中で最低だった。

 日本国内のITエンジニア不足は深刻で、帝国データバンクが4月時点で行った調査では、「正社員が不足している」と回答した情報サービス業界の企業は71・7%にも上った。

 現場で働く人々が足りていないのに、収入がなぜ増えないのか。大手外資系IT企業でコンサルタントや営業を長年務めた大阪経済大学国際共創学部の竹下智教授(経営情報学)は「業界の多重下請け構造に問題がある」とみる。

 何段階にもわたって下請けに出されるうちに、さまざまな名目で「中抜き」が行われ、現場で制作を行うエンジニアの取り分が減っていくからだ。

 ITエンジニアの年収アップには、発注金額の増額も不可欠だが、思うように進んでいない。

 システム開発企業の労働組合が加盟する情報産業労働組合連合会の23年調査では、発注金額について仕事を出す側から価格改定を申し出たケースは全体で56・8%あったが、100人未満の企業では40%にとどまった。

 相手の企業規模が小さいほど、仕事を出す側は値上げを言い出さない状況とみられ、多重下請け構造が現場の年収を抑える要因になっている。【中島昭浩】

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