NECは新入社員が役員を指南するリバースメンタリング研修を実施した(5日、東京都港区)

NECは5日、若い世代が年配者の先生役となる研修「リバースメンタリング(RM)」を初めて実施した。新入社員が役員から職場の悩みを聞き出し、それを解決するアプリケーションを1時間半で作り上げた。上意下達でない組織文化を醸成するとともに、若い世代の働きがいを高める狙いがある。

「社内コミュニケーションを活性化させたいんだけど、どうすればいいかな?」。5日午後、NEC本社の研修会場でこう尋ねた役員に対し、新入社員が「上司とのチャットは句読点が多くて怖いんです」と応じた。話し合いの結果、絵文字を入れないと投稿できない社内チャットアプリを作った。

今回のRM研修はデジタル人材育成のライフイズテック(東京・港)のプログラムを使い、役員35人と新入社員35人の計70人が3〜5人ずつのチームに分かれて参加した。新入社員はプログラミング不要の「ノーコード」ソフトを駆使して役員の悩みを解決した。

新入社員は幼いころからインターネットが身近にある「デジタルネーティブ」世代。グローバル企画部門長の室岡光浩役員は「ソフトにとても慣れている。自身の部署には新入社員がいないため、刺激的な体験だった」と笑顔を浮かべた。

NECは終身雇用や年功序列といった旧来型の人事制度からの脱却に力を入れてきた。仕事内容と求められる成果を明確にするジョブ型雇用に順次移行し、4月には新卒を含む全社員が対象になった。

ただ、制度改革を進めても、フラットな組織文化を醸成するのは簡単でない。年齢差はその要因の一つとなり得る。NECの社員の平均年齢は3月時点で43.3歳。東京商工リサーチが2021年に国内157万社を対象に実施した調査では平均年齢は34.1歳だ。

そこで導入したのが今回のRM研修だった。企画したNECの森田健・カルチャー変革エバンジェリストは「職場に配属されると部門ごとの縦社会に疲れ、数年後に離職してしまう新入社員も少なくない。挑戦できる場を作りたかった」と狙いを語る。

RM研修は1990年代後半に米ゼネラル・エレクトリック(GE)などが始めた。経営幹部が現場のエンジニアらから、進化の速いIT(情報技術)関連の知識を教わる狙いだったという。

最近は幹部層が若手の柔軟な発想や知見に触れられ、若手は幹部から教訓を得られるといった利点も評価されている。日本企業でも資生堂や住友化学、三菱マテリアルなどが導入済みだ。

NECは25年以降も年1回以上のペースでRM研修を開催する方針。新入社員の田辺広大氏は「役員の方をあだ名で呼ばせてもらって話しやすかった。普段の職場でも上司に率直に意見を言っていいんだという意識を大切にしたい」と手応えを得た様子だった。

(張谷京子)

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