覚書を交わしたイトーキの湊社長㊧と滋賀県の三日月大造知事(9日、大津市)

オフィス家具大手のイトーキは15日から1カ月間、国内最大規模の関西工場(滋賀県近江八幡市)などでハノイ工科大の学生10人をインターンとして受け入れる。海外学生が対象の同社のインターンシッププログラムは初めて。同社は9日、滋賀県とベトナム人材の受け入れ促進で覚書を交わした。同国最高水準の「技術者の卵」を巡り、サムスン電子など韓国企業との獲得競争で優位に立つ狙いだ。

プログラムは8月16日まで。学生は関西工場で生産関連の実習を受けた後、滋賀県の協力で環境に関連する県内の企業や公共施設を訪問する。京都や東京では日本文化に触れる。将来のイトーキへの就職を前提にはしておらず、帰国後に同県やイトーキのイメージアップのためインフルエンサーの役割を期待する。国内の少子化を背景とした人材難を克服するため官民が手を携える。

ハノイ工科大はベトナム最高水準の技術系総合大学で、イトーキは人工知能(AI)などの分野で高度専門人材の供給を期待する。ハノイ工科大からは2023年5月に初めて卒業生1人を受け入れ、同年11月にも1人が入社した。同年12月には同大学とパートナーシップを締結し、24年10月以降に9人を順次受け入れる。

9日に大津市で覚書の締結式に参加したイトーキの湊宏司社長は「国内では優秀な技術者の獲得が難しくなっている」と説明した。少子化で学生数が年代を経るごとに減る一方、AIや半導体関係を大学で学んだ人材への求人は伸びる傾向にある。

イトーキでは内定を出しても多数が辞退する状況にも直面し、賃金水準や技術力の高さから日本企業の人気が根強いベトナムの上位大学に採用の照準を定めた。だが、日本と同様に人材不足に悩む韓国の大手企業もハノイ工科大に接近しており、ベトナム人材の受け入れで経験のある滋賀県と手を組んだ。

滋賀県は21年、ベトナムの高度人材を獲得するため滋賀経済産業協会とともにハノイ工科大と覚書を交わした。23年11月には三日月大造知事が同大学を訪れ、日系企業への就職を目指す学生を誘った。滋賀県に集まる大手メーカーの生産拠点は外国人材の獲得に熱心で、23年末現在の外国人人口を国籍別にみるとベトナムが全体の24%を占めて最高だ。

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