宮崎牛に佐賀牛、鹿児島黒牛など全国に名だたるブランド和牛がひしめく九州で、知名度は低いながらも来年で商標登録20年を迎えるブランド牛がある。その名は福岡県の「博多和牛」だ。【植田憲尚】
後継者育成も課題 糸島農高生「和牛甲子園」に挑戦
JA全農ふくれんなどによると、博多和牛は県内でおおむね20カ月以上肥育された和牛で、肉質等級が5段階のうち3等級以上になることが条件。餌の一部に県産の稲わらを食べさせていることも条件だ。稲わらは牛の腸内環境を整える作用があり、外国産が使われることが多いが、県産の方が質は高いという。
福岡市西区で博多和牛の肥育や販売などを手掛ける「堀ちゃん農場」の堀田和秀社長(69)は「他県の和牛と比べても味は負けていないと思う」と自信を見せる。餌に使う稲わらは自社の田んぼで自給。直売所やレストラン、インターネットでの販売も展開し、博多和牛の良さをPRしている。
ただ規模は横ばいで推移している。博多和牛の畜産農家数は県内38戸(2024年5月時点)で年間の出荷は3000頭ほど。鹿児島黒牛の8分の1程度にとどまる。
知名度が低く、九州他県のブランド和牛と比べて単価が上がらず担い手はなかなか増えない。飼料価格の高騰が経営を圧迫している上、物価高で安価な豚肉や鶏肉に人気が集まり、牛肉販売価格自体も伸び悩んでいる。
一方で品質は向上しており、5年に1度の「全国和牛能力共進会」では博多和牛が22年に初めての優等賞を獲得している。博多和牛販売促進協議会JA部会の平山英一会長(61)は「数が少ないこともあり、福岡で観光に来た人々をターゲットにブランド化していけたら」と話す。
高齢化が進み、後継者育成も課題になっている。そこでJAグループが働きかけ、2年前から県立糸島農業高校が博多和牛の肥育に挑戦。県内の高校では初の取り組みで、今年は牛を世話している生徒3人が、高校で飼育された和牛の枝肉の肉質などを競う「和牛甲子園」に挑戦する予定だ。松尾法倫校長(55)は「和牛甲子園で博多和牛を出品するのは県内の高校で初めて。こうした取り組みを通じて県内の畜産を担う意気込みを持ってやっていきたい」と話す。
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