取材に応じる米タイヨウ・パシフィック・パートナーズのブライアン・ヘイウッドCEO(17日、神奈川県鎌倉市)

ローランドディージー(DG)の大株主で実施中のMBO(経営陣が参加する買収)を支援する、米タイヨウ・パシフィック・パートナーズのブライアン・ヘイウッド最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞社などの取材に応じた。ブラザー工業が対抗TOB(株式公開買い付け)の考えを表明したことについて、過去の経緯を踏まえ「企業価値の毀損になれば、日本にとって良くない」と慎重な姿勢を示した。

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――タイヨウとローランドDGのこれまでの関係を教えてください。

「タイヨウは2005年に株式を取得してから、19年にわたって保有している。20年の田部耕平社長の就任後は、私自身もローランドDGの取締役になり経営を支えてきた。23年9月にブラザーから買収提案を受けた後は、(利益相反を回避するため)取締役会の関係する議論には参加していない」

――ブラザーとはどういう関係ですか。

「19年にブラザーがタイヨウにローランドDG株の売却や事業提携を打診してきた。売却するつもりはなかったが、事業上のシナジーにつながれば両社にとってプラスだと考え、ブラザーをローランドDGの経営陣に紹介した」

「その後、両社は4年間にわたり協業した。ただ計画が何度も遅れたり、取引価格を変更されたりして『大成功した、絶対に一緒にやりましょう』という気持ちにはなれない結果だった。23年9月にローランドDGがブラザーから買収提案を受けたときは驚いた」

――買収提案にどう対応しましたか。

「(23年の経済産業省による)企業買収における行動指針も踏まえ、『真摯に検討をすべきだ』『ブラザーの提案も検討対象にすべきだ』と会社には伝えた。一方で、協業がうまくいっていないことから、ローランドDGの企業価値が破壊される可能性もあると考えた。そのためブラザー側に買収した場合のディスシナジー(マイナス効果)をきちんと説明することが非公開化の入札に参加する条件と伝えたが、説明がなかった(ため入札に参加していない)」

「タイヨウが支援するMBOよりもブラザーの案が優れていれば、株主として売却を考える。しかし19年間にわたって手伝ってきた会社の企業価値が破壊されるのであれば反対する。ブラザーがローランドDGを買収することで両社の価値の毀損につながれば、日本にとっても良くない」

――タイヨウ側の買い付け価格はブラザーの提案を下回っています。このままではMBOが成立しないのではないですか。

「論理的には価格が高い方が勝つ。でも、これで終わりかどうかは決めていない。米国などでは1円でも買収価格が高い方を選択すべきだという見方があるが、私は日本なりの方法で適切な情報や議論があってもいいと思う。価格が1円高かったために、会社の価値が毀損するのであれば良くないことだ」

――ローランドDGはブラザーに買収されるとディスシナジーがあるとして、タイヨウと組んだMBOへの賛同を続けていますが、ディスシナジーの中身は説明していません。

「ローランドDGが決めるべきことだが、ディスシナジーは説明すべきだと思う。ただ日本企業の相手の顔をつぶさないような進め方も理解している」

――ローランドDGの株価は堅調です。なぜエグジット(売却)せずにMBOに協力するのですか。

「まだ価値を上げられる自信があるからだ。(電子楽器大手の)ローランドのMBOでも成果を挙げており自信はある。ローランドのケースではリストラなども実施し、楽器の売上高はMBOしてから大幅に伸びた」

「ローランドDGもさらに価値を上げるためには痛みを伴う施策も必要となり、それは上場したままでは難しい。(上場企業は)四半期決算でひとつミスをすれば、株価は大きく下がるリスクがあるからだ」

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