浅草寺を訪れた外国人観光客(東京都台東区)

森トラストは16日、2024年のインバウンド(訪日外国人)客数が前年比38%増の3450万人になるとの試算を発表した。新型コロナウイルス禍前を大きく上回る水準となる。インバウンドによる旅行消費額も同23.5%増の6兆9200億円で、ともに過去最多を更新する見込みという。

これまでインバウンドは19年の3188万人、旅行消費額は23年の5兆3065億円が最多だった。円安で割安感が出ていることに加え、欧米系の観光客の増加が後押しした。同日メディア向けの説明会に出席した森トラストの伊達美和子社長は「東京五輪・パラリンピックによって日本がプロモーションされ、潜在的意識が植え付けられたのではないか」と分析する。

日本政府は30年に年6000万人という目標を掲げている。伊達社長は目標達成に向け、労働力の確保やインフラ整備が必要だと指摘した。特に規制緩和が必要な分野として(年収が一定額を超えると税や社会保険の負担が生じる)「年収の壁」の見直しや外国人労働者の受け入れ、ライドシェアなどを例に「昭和の制度を大きく変えていく必要がある」と述べた。

足元では観光客が集中するオーバーツーリズムが各地で問題になっている。伊達社長は「(混雑対策で)観光用の移動バスを用意するなど、対策によって解決できる」と説明する。世界的に見て低い宿泊税や公共施設の入場料を見直すなどして財源を確保し、インフラ整備に充てる必要性があると説いた。

森トラストは近年、奈良県や長崎県でホテルを開発している。伝統的に人気がある東京から富士山を経て京都、大阪へと抜ける「ゴールデンルート」以外でも「外国人比率が上昇しており、成長余力がある」としている。

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