システム障害で正しく情報が表示されなくなった米シカゴ・オヘア国際空港の案内画面(19日)=AP

米企業のセキュリティーソフトの不具合によって世界各国で同時多発した大規模システム障害は20日、発生から1日が経過し、復旧に向かい始めた。日本航空(JAL)やコンビニなど日本企業の障害は復旧した。金融、交通、医療、政府機関など影響の範囲は広く、米国ではなお影響が残る。過去最大規模の障害との見方も多い。

障害が起きた原因は米セキュリティー大手クラウドストライクのソフトで、顧客企業にネット経由で提供している。米国時間19日未明に実施したソフト更新に欠陥があり、米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」を搭載した多くのコンピューターが停止して操作できなくなった。

クラウドストライクは発生から2時間後に修正用のプログラムを配布した。ただ、顧客側でも修正の作業が必要だったことで復旧まで時間がかかり、影響が広がった格好だ。

影響が大きかった航空業界ではシステム復旧が進む。航空調査データのフライトアウェアによると米東部時間午前4時時点で20日の欠航予定は約1000便と、19日の2割程度に落ち着いた。

国内では日本航空で起きていたシステム障害が19日中に復旧した。一時国際線の航空券の予約など全サービスが利用できなかったが、20日は通常通り使えるようになった。傘下の格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンでも復旧作業が進み、20日は欠航した5便を除き通常通り運航している。

ただ、米国を中心に障害の影響は残っている。米連邦航空局は19日(米国時間)に「今後も一部空港では断続的に遅延が起きる」との声明を出した。

店舗の会計に影響が出たユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は19日中に復旧し、20日は通常通り営業した。セブンーイレブン・ジャパンなどコンビニエンスストア大手3社でも19日夜から一部のプリペイドカードが一時購入できなくなる影響が出ていたが、同日中に復旧した。

クラウドストライクのソフトは幅広い業種で利用されている。システム障害は製造業や金融などに広がり、過去最大規模の障害との見方も出ている。

米メディアによると、電気自動車(EV)大手テスラは19日早朝、テキサス州やネバダ州の工場で生産ラインを停止した。同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は同日、X(旧ツイッター)で「過去最大のIT(情報技術)障害だ」と投稿した。

米銀最大手JPモルガン・チェースではトレーディングや決済のシステムで一部の社員がログインをしにくくなった。複数の欧米メディアが、欧州中央銀行でも総合決済システムが影響を受けたと報じた。

病院や公的機関でも影響が出た。AP通信などによると、テキサス州は州内全ての運転免許証事務所を閉鎖した。米NBCによると、全米各地の病院や医療センターが患者を受け入れられない事態に陥ったという。

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