森と水の学校では実際の森を散策する

サントリーホールディングス(HD)の水や森の大切さを伝える環境教育「水育(みずいく)」の取り組みが2024年に20周年を迎えた。小学生などを対象にした出張授業や課外授業は、国内の累計参加数が25万人を超えた。8月には20年前に小学生だった20〜30代に向けたセミナーを開き、より幅広い世代に向けて水資源の大切さを伝える。

「水はどこからきて、どこへいくのだろう。水になったつもりで地球を旅し、私たちの生活とのつながりを探ってみよう」。メディア向けに開かれた水育「出張授業」の体験会。講師を務めるHD傘下のサントリーパブリシティサービス(東京・江東)PRコミュニケーション事業部の田中省伍氏が呼びかけた。

小学4、5年生が対象の出張授業は2部構成になっており、1部目は水が地球上を巡っている「水循環」について学ぶ。カードを用いたボードゲーム方式で、湖、地下水、森・植物、川、雲、海、土の7つのスポットで水がどのように使われているかを追っていく。地下水のカードなら「工場で飲用水をつくるために使われました↓川に進む」などと記載されており、水が生活の中で旅する様子をゲーム感覚で味わえる。

2つ目の授業は森について学ぶ。AとBの2つの土が示され、見た目や匂いでどちらの土に水をため込んで浄化する能力があるかをディスカッションしてもらう。意見を出し合ったら2つの土に水を流す実験で答え合わせ。田中氏は「子どもたちが一番ワクワクする瞬間。合っていても間違っていても、子どもたちの意見を受容しながら授業を進めていく」という。

森の状況を再現した2種類の土を使い、水をきれいにする効果を体験できる

参加した子どもたちからは「水は長い間旅をして自分たちの所に来てくれている。今後は感謝しながら使うようにしたい」「将来、森や自然を大切にする取り組みをする仕事に就きたい」といった声が寄せられているという。

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小学3〜6年生と保護者を対象に、実際の森の中で水源や水に触れる体験を通して学ぶ「森と水の学校」という形式もある。参加費は無料で、8月まで開催している。新型コロナウイルス下で始めたオンラインで学ぶ「リモート校」は、小学1〜6年と対象を拡大している。

8月には20周年特別企画として、20〜30代向けの水育セミナーを開く。これまでは主に小学生や保護者を対象にしていたが、水育を始めた20年前に小学生だった大人をターゲットに据え、計120人の参加を想定する。

サントリーHDサステナビリティ経営推進本部の橋本智裕氏は「水は人々の生命や生活を支える貴重な資源で、サントリーグループの企業活動の源泉。いい水がなければ、いいビールもウイスキーも清涼飲料水も何一つ作ることができない」と取り組みの意義を語る。

15年からは「水育(mizuiku)」として海外でも授業を始めた。ベトナムやニュージーランドなど欧州・アジア・オセアニアの8カ国で累計58万人が参加した。ベトナムでは手を洗う衛生教育からスタートするなど、地域の実態に応じたプログラムを作成しているという。

世界気象機関(WMO)によれば、50年までに約50億人が水不足に見舞われるとする予測もある。橋本氏は「世界では水不足が深刻化している。多くの農作物を輸入している日本は、農作物を通して水を輸入しているとも言える。水の大切さについて共感してもらい、行動変容を促したい」と話す。

(八木悠介)

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