プロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地移転で収入の柱を失った札幌ドームが、運営赤字解消に向けて多彩な競技やイベントの誘致を模索している。こうした中、急速に存在感を増しているのがこれまで札幌ドームとは縁が薄かったラグビーだ。
「スタジアムはとても良かった。天候の影響も考えなくていい」
ラグビーの国内最高峰「NTTリーグワン」1部のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ―コベルコ神戸スティーラーズ戦が札幌ドームで行われた4月21日。選手らは会場への好印象を口々に語った。
2022年に発足したリーグワンの公式戦が札幌ドームで開催されるのは、この日が初めてだった。
ラグビーの開催が目立つようになったのは23年からだ。7月に北海道内で29年ぶりの日本代表戦となる日本―サモア戦があり、10月はリーグワンのチームがプレシーズンマッチを開催。今月21日には日本代表が強化試合でイタリアと対戦する。
こうした流れは、日本ハムが本拠地を「エスコンフィールド北海道」(北海道北広島市)に移したことと無関係ではない。
施設を運営する札幌市の第三セクター「株式会社札幌ドーム」によると22年度に124日だったイベント開催日数は、日本ハム移転後の23年度は98日に減った。24年3月期の最終(当期)損益は過去最悪の6億5100万円の赤字で、売上高は01年度の開業以来最低の12億7100万円にとどまった。
赤字解消には新たな「パートナー」が必要で、その一つとして浮上したのがラグビーだ。札幌ドームは19年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で2試合を開催した実績があり、市や道ラグビー協会などは試合の誘致に力を入れ始めている。
ドーム側の思惑は全国各地の試合を通じて人気を高めたいラグビー界にとっても好都合だった。イタリア戦も日本ラグビー協会による日本代表戦の開催地公募事業の一環で札幌開催が決まった。
気温上昇などの気候変動も追い風だ。近年の猛暑は選手や観客にとって過酷で、ゲリラ豪雨もプレーや観戦の脅威となる。だが、天然芝のグラウンドを備えながらも全天候型である札幌ドームはその影響を受けない。
札幌山の手高出身の日本代表、リーチ・マイケル選手は「真夏に涼しいところでやれるのはありがたい。クーラーが利いたこのラグビー場(札幌ドーム)で毎年試合がしたい」と開催を歓迎する。
市の担当者は「日本ハム移転のメリットを考えるなら、(日程に余裕が生まれて)いろいろな使い方ができるようになったこと。他競技を含めて国際大会も誘致できるよう、可能性を探りたい」と話した。
ただ、課題も残る。4月のリーグワンの観衆は6354人。首都圏などに集客の面で劣る点や選手らの移動負担を考慮すると、札幌ドームの使用料は高いといい、頭を悩ませるイベント主催者も少なくない。【谷口拓未】
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