いすゞ自動車は24日、普通免許で運転できる小型ディーゼルトラック「エルフミオ」を30日から販売すると発表した。車両総重量を普通免許の範囲内である3.5トン未満に抑えた。残業規制の強化により、トラック運転手の不足が深刻化している。トラックに乗るハードルを下げ、人手不足を解決する切り札となるか。
「建設や小売業者などアプローチできなかった層への普及を図る」。都内で開いた発表会で、南真介社長は新たな顧客開拓に意欲を示した。
普通免許で運転できる車は車両の総重量などで決められている。17年までは総重量が5トン未満の車を運転できたが、制度の見直しにより17年3月以降に取得した普通免許では、3.5トン未満の車しか運転できなくなった。
制度に対応した小型トラックは電気自動車(EV)やガソリン車はあるが、最も普及するディーゼル車はこれまでなかった。物流会社は準中型以上の免許を取得させる必要があるため、運転手を確保するハードルが高くなっていた。
いすゞの小型ディーゼルトラック「エルフ」は最も積載量が小さいタイプでも3.5トンを超えていた。エルフミオではエンジンなどの部品を軽くし、車両総重量を3.5トン未満に抑えた。販売価格は希望小売価格で402万500円(東京地区)と、従来の小型トラックと比べて安い。
残業規制を受けて、物流の人手不足は深刻になっている。野村総合研究所の予測によると、現状のまま人手不足が続くと、30年に15年に比べて全国の約35%の荷物が運べなくなる恐れがあるという。特に東北や四国では約40%の荷物を運べなくなる懸念がある。
いすゞは普通免許で運転できる小型のEVトラックを1月に発売した。航続距離や充電網の不安のほか、販売価格が2倍以上高い点もネックとなり、販売台数は数十台にとどまる。ディーゼル車の投入が、運転手を増やすための切り札になるとみている。
エルフミオの販売を機に、物流企業以外の顧客も開拓する。専用の販売サイトを立ち上げ、商談から契約までネット上でできるようにする。購入の敷居を下げることにより、需要を掘り起こす考えだ。
いすゞはまずディーゼル車とEVを合わせて年5000台の販売を目指す。運転手も増やすことにより、30年度に年1万2000台を販売したい考え。
いすゞは電動化や自動運転などに1兆円を投じ、将来の成長の柱に据える。ただ、普及には時間がかかるため、エンジン車で利益を稼ぎ出すことが重要となる。エルフミオの投入により収益力を高められるかは、いすゞの成長戦略に影響する。
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