厚生労働省が開いた労働政策審議会(24日、東京都千代田区)

厚生労働省は24日、医療・介護・保育の3分野の人手確保に向け、悪質な人材紹介事業者への対策を強化する方針を示した。いずれもサービスの多くが公定価格で、高騰する紹介手数料が施設の経営を圧迫している。紹介業者が就職する人に渡す「祝い金」や転職勧奨などを取り締まる。

対象の3分野は事業所の規模などに応じて配置人数が法令で決められている。短期間での離職率が高く、離職者が出ると早期に専門人材を補充する必要がある。公共職業安定所(ハローワーク)よりも速やかに対応できる有料の人材紹介サービスを利用する傾向がある。

紹介業者を巡っては頻繁な転職を促し、手数料を稼ぐといった悪質な事例が相次ぐ。厚労省が2023年8月から24年5月に全国約1100事業所を調査したところ、6割で法令違反が発覚した。本来禁止されている祝い金の支給や、紹介手数料などの表記の不備があった。

対策として厚労省は、祝い金や転職勧奨の禁止を職業紹介事業の許可条件に加え、違反が続く場合には許可を取り消す。各紹介業者で取り扱いが多い5職種について、手数料実績の公開を義務付ける。

求人情報などの検索サービスを提供する「募集情報等提供事業者」に対する規制も強化する。ハローワークに3分野の専門窓口を整備したり、ウェブサイトを使いやすくしたりする。

厚労省が24日開いた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会で大筋了承を得た。今後は関係する法令や指針の改正に取り組む。

医療や介護サービスの多くは公定価格であり、人材採用でかかったコストをサービス価格に転嫁しにくい。紹介手数料の高騰が施設経営を圧迫している。コスト増で職員の処遇改善が後回しになり、さらなる離職を招く悪循環にも陥りかねない。

東京都病院協会が都内の病院にアンケート調査したところ、大学病院を除けば約9割の施設が人材紹介会社の利用経験があった。22年度に利用したサービスの満足度を聞いたところ「やや不満」「とても不満」が合わせて7割にのぼった。紹介手数料の高さや、採用した職員が短期で退職した場合の保証制度を巡る不満が目立った。

同協会の調査によると、職種別の平均紹介手数料は医師が最も高い335万円だった。看護師が159万円、薬剤師は112万円だった。土谷明男副会長は「人材紹介サービスの利用は病院の経営悪化要因になっている」と指摘する。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。