日本銀行本店=2020年1月9日、松倉佑輔撮影

 日銀は30、31日の金融政策決定会合で、追加利上げの是非を議論する。2%の物価安定目標の実現が着実に近づいているとの見方などから、市場では今会合で政策金利の引き上げに踏み切るとの見方も出ている。ただ、日銀内には力強さに欠ける個人消費を理由に慎重な声もあり、経済・物価情勢を入念に点検したうえで利上げの妥当性を判断するとみられる。

 日銀は3月会合でマイナス金利政策など一連の異次元緩和策を終え、政策金利を0~0・1%程度に誘導すると決めた。その後も物価が日銀の見通しに沿って推移すれば、政策金利を段階的に引き上げていく姿勢を示している。植田和男総裁は6月の記者会見で、7月会合での追加利上げについて「経済・物価情勢に関するデータ次第で、当然あり得る」と強調した。

 日銀は各種統計やヒアリング情報を基に、中小企業への賃上げの波及などを確認している。追加利上げに踏み切る場合、政策金利は0・25%程度とする案が浮上している。一方で、ある日銀幹部は「さえない状態の個人消費が上向く姿を確認したい。慌てて利上げに踏み切る必要はない」と指摘。利上げは時期尚早との見方も依然として強い。

 政府からは利上げを後押しする趣旨の発言が相次いでいる。岸田文雄首相は19日、経団連の夏季フォーラムで「日銀とも経済の大局観を共有しつつ緊密に連携している。金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする」と述べた。市場では7月会合の利上げの可能性は「もはや五分五分」との声もある。

 もう一つの焦点は、国債買い入れ減額の具体策だ。日銀は6月会合で、保有国債を段階的に縮小する量的引き締めを始める方針を決め、7月会合で今後1~2年程度の減額計画をまとめると表明している。

 日銀は現在、銀行や保険会社などが持つ国債を月間6兆円程度購入している。減額は「相応の規模になる」(植田氏)とされ、月額3兆円前後まで減らす案を軸に検討するとみられる。【浅川大樹】

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