記者会見する青森県の宮下知事(29日、県庁)

原子力発電所の使用済み核燃料を受け入れる全国初の中間貯蔵施設(青森県むつ市)を巡り同県の宮下宗一郎知事は29日、操業を認める考えを明らかにした。操業開始の前提となる「安全協定」を事業者やむつ市と8月に結ぶ。協定締結により中間貯蔵施設が近く稼働する見通しだ。

宮下氏は青森県庁での記者会見で、使用済み核燃料の受け入れに関し「行き先(搬出先)について懸念が払拭した」と説明した。23日に斎藤健経済産業相と面会し、中間貯蔵期間が終わった使用済み核燃料の搬出方針について説明を受け「一定の回答を得られた」と判断した。

「立地自治体のむつ市の判断を最も重視した」とも語った。むつ市の山本知也市長は既に協定締結への賛同を表明している。

中間貯蔵施設は使用済み核燃料を再処理工場に搬出するまでの間、一時的に保管する。むつ市の施設は東京電力ホールディングスと日本原子力発電が出資するリサイクル燃料貯蔵(RFS)が運営する。

8月9日に安全協定の調印式を開く。RFSは9月までに稼働を始める予定で、東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)の使用済み核燃料を順次搬入する。

国が基本方針とする「核燃料サイクル」は中間貯蔵と再処理が重要な過程だが、再処理工場の整備は遅れ気味だ。青森県内では中間貯蔵が「永久貯蔵になるのではないか」との懸念が出ていた。

安全協定には使用済み核燃料の貯蔵期間を「50年間」と明記する。福島第1原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、安全性の向上に継続的に取り組むことも記載する。

協定を補完する覚書も結ぶ。東京電力や原電の責任を明確化するほか、中間貯蔵施設での保管が困難になった場合は施設外への搬出を含めた適切な措置をとるよう求める。

むつ市の中間貯蔵施設を巡っては2004年に東京電力が地元自治体に立地協力を要請し、05年に青森県が建設に同意した。およそ20年の時間を要し、全国初の中間貯蔵施設が稼働することになる。

国内の原発の敷地内にある使用済み核燃料の保管容量は限界に近付きつつある。全国の原発にたまり続けた使用済み核燃料は保管可能な容量全体の8割弱となっている。

国が目指す核燃料サイクルは原発の使用済み核燃料を日本原燃の工場で再処理し、プルトニウムやウランを取り出す。それを再び原発で燃料として使うといった内容だ。核燃料資源を繰り返し使うなら、中間貯蔵施設の燃料はすぐに再処理工場に搬出されることになる。

原発の長期的な安定稼働には核燃料サイクルの構築がカギとなるが、再処理工場(同県六ケ所村)は当初目指していた1997年の完成予定から27年が経過しても稼働時期は見通せていない。

再処理工場が稼働しない場合、受け入れた使用済み核燃料の持ち出し先は宙に浮いたままだ。中間貯蔵の期間が示されても、地元住民からは「受け入れと再処理工場の稼働の順序が異なるのでは」との不満も漏れる。

斎藤経産相は中間貯蔵施設の事業開始を前に再処理工場を核燃料の搬出先の一つに挙げる考えを表明した。再処理工場稼働に国が責任を負う姿勢を明確にした形だ。

青森県と電力会社などは国が核燃料サイクル政策を断念した場合、既に県内に持ちこんだ使用済み核燃料を県外に搬出することを約束している。全国の原発の再稼働もままならなくなり、サイクル政策をどう進めるか国の姿勢が問われることになる。

【関連記事】

  • ・むつ市中間貯蔵施設、核燃料受け入れ最終調整 青森知事
  • ・青森・むつ市、「中間貯蔵施設」交付金で地域再生へ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。