「GDS2024世界デジタルサミット」で講演するIBMの浅川智恵子フェロー(1日、東京都千代田区)

米IBMグループ技術者の最高職位「IBMフェロー」で日本科学未来館館長の浅川智恵子氏は1日、「GDS2024世界デジタルサミット」(主催:日本経済新聞社)で登壇し「テクノロジーを活用すれば障害者らが参加しやすいインクルーシブ(包括的)な社会づくりを実現できる」と述べた。

浅川氏は子どものころに負ったけがで自身も視覚障害を抱える。「当時は一人で外出するのも怖かった」と振り返る。講演では「科学技術とともに実現するインクルーシブな未来社会にむけて」をテーマに、「科学技術には障害者の暮らしを変える力がある」と語り、その事例としてスマートフォンで撮影した写真の画像を人工知能(AI)が認識して読み上げる機能を紹介した。

そのうえでインクルーシブな社会づくりのためには「障害者などのアクセシビリティー(利用しやすさ)の観点を踏まえてイノベーションを起こすことが重要」と強調した。

浅川氏はIBMの技術者として視覚障害者への製品やサービスなどへのアクセシビリティー向上につながる研究を続ける。現在開発に携わるAIを活用したスーツケースは人を目的地まで誘導するロボットで、一歩先の安全性を確保する視覚障害者用の白杖(はくじょう)の代わりにもなるという。「視覚障害者が街の中に溶け込んで自由に歩き回ることができるようになる」と話した。

こうしたイノベーションにはプライバシー保護や安全性など社会実装に向けた課題もあると説明。「発明と社会実装は分けることができない。実験を繰り返し課題解決や磨きをかけることが重要だ」と語った。

最後に「誰もが活躍できる組織のためにはトップのリーダーシップが大事。ぜひ企業のトップの皆様には火付け役になってほしい」と会場に呼びかけた。

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