記者会見する筑波大の永田恭介学長(写真㊧)と三井住友FGの中島達社長(1日、都内)

三井住友フィナンシャルグループ(FG)は1日、筑波大学と財務基盤の強化などを巡り連携協定を結んだと発表した。筑波大の起債などによる資金調達や運用で協力する。運営費交付金に頼る国立大の財務は中長期的に健全性が危ぶまれている。メガバンクとの協業で対応する狙いがある。

「三井住友FGからほしいのはお金ではなくノウハウだ」。筑波大の永田恭介学長は1日に都内で開いた記者会見で強調した。筑波大は理科系の研究で国際的にも有名だが、研究設備の維持などには膨大な資金がかかる。西尾チヅル副学長は「寄付金の効果的、効率的な運用の強化をはかりたい」と述べた。

研究施設などの設備投資に必要な資金を充当するために債券を発行する場合、起債や販売にあたって証券会社などの関与が欠かせないほか、寄付金などを原資にした運用ではアセットマネジメント会社や同社の人材が関わればより収益を得やすい手法をとれる可能性がある。不動産分野でも協業を視野に入れる。具体策を今後詰める。

三井住友FGは傘下に業界大手のSMBC日興証券や三井住友DSアセットマネジメントを置く。三井住友FGの中島達社長は「(資金調達などに)グループの総合力でしっかり貢献できる」と語った。銀行と大学の連携協定は研究や寄付を軸としたものが多く、運用を軸にキャッシュレスなど多くの分野で連携を敷くのは異例だ。

筑波大は三井住友FGとの連携協定に先立ち、4月1日付で資金運用などを統括する最高財務責任者(CFO)を新設して三井住友銀出身の野手弘一氏を招いた。三井住友銀出身者も関与する形で運用組織も強化しており、組織間で協定を結んだことで一段と協力に弾みをつける。

永田氏が会長を務める国立大学協会は6月の声明で国からの運営費交付金の減額や物価の高騰で国立大の財政は「もう限界だ」と訴えた。授業料の引き上げを模索する動きが相次ぐ。東北大学などもオルタナティブ(代替)資産への投資に乗り出した。両者の取り組みは国立大の脱「交付金」にむけた試金石となる。

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