電子部品大手8社の2024年4〜6月期連結決算が7日出そろった。村田製作所やTDKなど5社の最終損益が前年同期から改善し、2社が25年3月期通期の純利益見通しを上方修正した。生成AI(人工知能)がけん引し、データセンターやスマートフォン向けの高機能品の需要が拡大した。足元では為替が円高・ドル安に傾いており、今後の業績の変動要因になる。
村田製作所、TDK、ニデック、京セラ、ミネベアミツミ、太陽誘電、ローム、アルプスアルパインの4〜6月期の連結決算を集計した。8社合計の純利益は前年同期比29%増の2429億円となり、4〜6月期では2年ぶりの増益となった。ニデック、京セラ、ロームを除く5社で前年同期を上回った。
太陽誘電は7日、4〜6月期の連結純利益が前年同期比7倍の63億円になったと発表した。円安が売上高と利益をともに押し上げた。前年同期比で売上高69億円、営業利益で38億円の増加要因になった。電気の流れを整える積層セラミックコンデンサー(MLCC)の販売がデータセンター向けに伸びた。福田智光・取締役常務執行役員は同日の記者会見で「7〜9月期に向けてさらにAI向けのデータセンターの需要が拡大する」と語った。
AIサーバーには高度な計算を処理するために高性能の半導体を搭載する。電力消費が大きくなるため、電気の流れを整えるMLCCの需要も伸びる。AIサーバーには従来よりも5~10倍の個数のMLCCが搭載され、容量も大きい。製品単価は高く、収益を押し上げる。村田製はサーバー向けがけん引し関連部門の売上高は前年同期比46%増の658億円と、主要5部門の中で最も伸びた。
スマホ各社が生成AI搭載の製品を投入したことも電子部品の需要を掘り起こした。AI駆動時に消費電力が増えるため、TDKは得意とする大容量のリチウムイオン電池の需要が拡大し、純利益は4倍の596億円となった。
TDKの山西哲司最高財務責任者(CFO)は「新型コロナウイルス禍で購入したスマホの買い替え時期に生成AI搭載スマホの発売が重なった」と指摘する。村田製の中島規巨社長は「足元で拡大するAIサーバー向け需要に加え、来期以降はパソコンやスマホの需要が本格化する」と更なる追い風を期待する。
一方、自動車や産業機器向けの電子部品はAI需要の波に乗り切れていない。京セラは欧州自動車メーカー向けのコンデンサーなどの電子部品販売が低迷し、純利益が2%減の367億円となった。谷本秀夫社長は「想定以上の落ち込みで回復のメドが立たない」と話す。
ロームは国内ファクトリーオートメーション(FA)機器メーカー向けの電子部品の販売が落ち込み、純利益は83%減の34億円だった。
ニデックとミネベアミツミの2社は25年3月期通期の純利益を上方修正した。ニデックはデータセンターで発生する熱の冷却装置が好調で、従来予想を200億円引き上げた。岸田光哉社長は「AIデータセンターの爆発的な成長で想定を上回る需要がある。部品は内製して利益率を高めていく」と話す。
ミネベアミツミはデータセンターのサーバーの冷却に使うファンモーター向けの軸受け(ベアリング)が伸びており、予想を20億円引き上げた。
今後の不透明要素は為替の変動だ。村田製は対ドルで1円円安になると約45億円、TDKは20億円の営業増益の要因となる。各社の通期の想定為替レートは140〜146円だが4〜6月期は1ドル=150円台で推移し、円安が収益の上振れ要因となった。
7日午後の為替レートは1ドル=146円前後で推移している。ゴールドマン・サックス証券の高山大樹アナリストは「電子部品は産業全体では底入れした。投資家は為替の水準が1ドル=140〜145円になったときに利益を出し続けられるかを注視している」と指摘する。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。