日銀の利上げに伴う株式相場の急落以降、上場企業の自社株買いの発表が相次いでいる。7日にはソフトバンクグループ(SBG)が5000億円、NTTが2000億円を上限に取得枠を設けた。背景には資本効率改善に向けて自社株を効率よく取得するほか、市場に自社の株価が割安だと伝える狙いがある。

SBGは7日、発行済み株式数(自社株除く)の最大6.8%相当の自社株買いを発表した。「1万円超だった自社の株価が一気に6000円台まで下がった。会社としてできる構え、守りを示す」(後藤芳光・最高財務責任者)。発表を受け株価は私設取引システム(PTS)で東証終値から一時5%超上昇した。

7日までにNTTや大和ハウス工業、キヤノンなども発表した。大和ハウスは「現状の株価水準に当社が満足していないことのアナウンス効果による株価上昇を期待している」とする。NTTの島田明社長は「資本効率の向上と株主還元の充実を図る」と語った。

上場企業の手元資金は3月末で約114兆円と高水準だ。東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一氏は「東京証券取引所のPBR(株価純資産倍率)改革で株価がようやく上がったばかり。今後も自社株買いを発表する企業は増えるだろう」と指摘する。

自社株買いをすると株式数が減り、投資家の重視する1株利益が改善する。株価急落で「少ない資金で多くの株数を取得できる絶好の機会」(東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木氏)。自社の経営状況を知る経営者が自社株買いに動くことで、自社の株価が割安だとアナウンスする効果もあるとされる。

自社株買いはこのほか、クボタが4月に設定した300億円の取得枠を500億円に拡大した。伊藤忠商事は5日、1500億円を上限に実施すると発表した。キヤノンの自社株買いは1月に発表した1000億円をほぼ上限まで買い入れており、24年累計で約2000億円となる。

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