松江市は宿泊税の税収を活用し、観光客らの利便性を高めていく(塩見縄手地区)

松江市が導入を検討する宿泊税の検討委員会が21日開かれ、1泊5000円未満の宿泊客について課税を免除する方針を了承した。これにより1人1泊200円を徴収することを柱とする宿泊税の内容が固まった。施行されれば新たに3億円程度の税収増につながる見込みだ。市は観光客らの利便性を高めるインフラ整備などを進め、インバウンド(訪日客)の拡大をめざす。

将来、松江の歴史や文化に対するファンを育てる観点から、学生の修学旅行での宿泊については課税を免除する方針も確認した。市は3月にまとめた基本方針案を修正したうえで、11月定例市議会に宿泊税の関連条例案を提出する。総務省との協議などを経て施行する予定だ。

宿泊税を巡っては検討委が今年3月、1泊一律200円とする基本方針案をまとめた。徴税事務を担う宿泊事業者の負担増などに配慮し、簡素な仕組みとした。これに対し、ビジネス客など観光目的以外の客も徴収対象となることに丸山達也知事が疑問を呈したほか、隠岐の4町村長が、住民の通院や部活動目的などの宿泊を免税とするよう要求した。これらの意見を受けて松江市は検討委を再開し、内容の見直しを進めていた。

同日の検討委では①隠岐諸島から通院や部活動のため松江に宿泊する人の約45%が宿泊料5000円未満②松江市内は宿泊料5000円以上から大きく宿泊人数が増加――などとする市の調査結果を改めて検証。免税の対象を5000円未満の宿泊客に設定して隠岐の住民らに一定の配慮をしつつ、宿泊事業者の事務負担も軽減でき、施策としてバランスがよいとの方向性で一致した。

検討委の田中治会長は「納税者と宿泊事業者にとって、おおむね許容範囲の結論を出せた」と述べた。

宿泊税を導入した場合の税収について、市は3.2億円程度を見込んでいる。免税対象を設けない場合の3.6億円と比べて約4000万円減るが、市が想定している事業規模に必要な3億円は確保できる見通しだ。

松江市の2023年の観光入り込み客数は857万人だった。増加傾向にあるものの、新型コロナウイルス禍前のピークである2019年と比べて8割程度の回復にとどまっている。

上定昭仁市長は「観光客に快適に過ごしてもらうには、まだ改善すべき余地が多い」とする。新たな税収を活用してインフラなどの整備を進め、国内外からの誘客をめざす。なかでも「オーバーツーリズム状態にある京都や奈良と違い、松江には伸びしろがある」(上定市長)として、インバウンドの拡大に期待をかけている。

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