主食用のコメは、去年の夏の猛暑の影響などから供給量が減った一方で、外国人観光客による需要が伸びていることなどから、ことし6月末の時点の在庫は、記録を取り始めた平成11年以降で、最も少なくなりました。

こうした中で、このところ各地のスーパーなどでは、コメが売り切れたり、1人当たりの購入点数を制限したりする動きが広がっています。

これについて農林水産省が流通各社に聞き取ったところ、今月8日に南海トラフの巨大地震への注意を呼びかける「臨時情報」が発表された後、コメの売り上げが急激に伸びたといった声が寄せられたということです。

農林水産省は、本格的に新米が出回る前の端境期で、もともと在庫が少なくなっていたところに、お盆期間の前後に地震や台風などに備えてコメを買いだめする動きが出たことが、スーパーなどでの品薄に拍車をかけた可能性があるとみています。

一方で、大手コンビニや外食チェーンなどは、卸売り業者と長期の契約を結んでいて、業務用のコメは確保できているところが多いということです。

農林水産省は、早いところではことしの新米が出回り始めていることから、スーパーなどでの品薄も次第に解消に向かうと見込んでいて、消費者に冷静な対応を呼びかけています。

去年の猛暑やコロナ禍の回復が影響

去年の夏の猛暑やコロナ禍からの回復などが影響し、コメの在庫は、記録を取り始めて以降、最も少なくなっています。

《要因1去年の天候》

新潟や秋田など日本海側の主要な産地では、去年5月の日照不足や夏の猛暑などが影響し、コメの収穫量そのものが低下しました。

また高温でコメが白く濁り、精米の段階で砕けやすくなるといった品質面の影響も出ました。

こうしたことから、農林水産省は、精米した後のコメの流通量が、前の年に比べて13万トン程度、減ったとみています。

《要因2コロナ禍からの回復》

一方で、コロナ禍からの回復などもあって需要は伸びています。

主食用のコメの需要は、長年、下落傾向が続いていますが、農林水産省のまとめでは、ことし6月までの1年間は、10年ぶりに増加に転じました。

コロナ禍からの回復で、外食向けの需要が伸びたことに加え、日本を訪れる外国人観光客が急速に回復したことも拍車をかけたとみられています。

農林水産省の試算では、外国人観光客のコメの消費量は、ことし6月までの1年間で5万トン余りに上り、前の年より3万トン余り増えたとしています。

《要因3ほかの食品の値上がり》

さらに、農林水産省は、コメの「値ごろ感」が需要の増加につながっているのではないかと分析しています。

ロシアによるウクライナ侵攻や円安などの影響で、小麦の輸入価格が上昇したことから、消費者物価指数によると、「パン」や「麺類」は、ことし6月時点で4年前に比べて20%ほど値上がりしています。

一方で「米類」は、6%程度の値上がりで、比較的、緩やかな上昇となっています。

農林水産省は、こうした値ごろ感もあって、パンや麺類の代わりにコメを買う消費者が増えているのではないかとしています。

流通するコメの量が減っている一方で、需要が伸びた結果、ことし6月末の時点でのコメの在庫は、去年より20%減って、記録を取り始めた平成11年以降では最も少なくなっていました。

スーパーや外食大手 対応は

コメが品薄となっていることを受けて、スーパーでは、販売を制限するなどの対応が広がる一方、外食大手では現時点で必要な在庫を確保できているとしています。

スーパー大手の「イトーヨーカ堂」では、全国の店舗で今月から購入できるコメの数をひと家族当たり1点のみに制限する対応をとっています。

ほかの大手スーパーでも、先月上旬から購入点数に制限をかけ始め、首都圏の店舗ではひと世帯当たり2点まで、近畿圏の店舗でひと世帯当たり1点までなどとしていて、最近では店舗や時間帯によってコメが品切れになることもあるということです。

一方、外食大手の「ロイヤルホールディングス」は、卸売会社やJAなど複数の契約先からおよそ1年分の在庫を確保しているということで、現時点で店の営業に影響はないとしています。

ただ、猛暑の影響などでコメの仕入れ値は、上がると見込んでいて、ことしの年間を通じた仕入れにかかるコストは、去年よりもおよそ1億円増えると見込んでいます。

民間調査会社「徐々にコメの流通にボリューム出る」

民間の調査会社「米穀データバンク」は、コメがスーパーなどで品薄になっていることについて、「もともと去年の猛暑や渇水の影響で市場に出回るコメの量が減っていたところに、パンや小麦などの価格上昇や日本を訪れる外国人観光客によって、コメの需要は増していた。さらに今月8日に宮崎県で震度6弱の揺れを観測した地震のあと需要が急拡大したことが、現在の品薄の背景にある」と分析しています。

その上で今後については「首都圏など大消費地の小売店などを中心に不足する状況が起きているようだが、すでに今月から関東で収穫が始まり新米が店頭に少しずつだが並び始めている。徐々にコメの流通にボリュームが出てくるので、品薄も解消していくのではないか」と話しています。

農林水産省「新米の生育 おおむね順調」

農林水産省によりますと、ことしの新米については、大雨の被害を受けた一部の地域などを除くと、これまでのところおおむね生育は順調だということです。

九州などの一部の地域では、すでに先月から早場米の出荷が始まっているほか、今月は本州の早いところでも新米の収穫が始まっていて、来月以降、新潟県や東北地方など主要な産地の新米が本格的に出回る見通しです。

一方で、新米の価格は、例年より、いくぶん高くなるという見方が出ています。

コメ農家に農協が支払う「概算金」は、品薄の影響や、生産コストの上昇なども背景に去年より1割から3割ほど増額されるところが出ています。

こうした概算金の増額が販売価格にも影響して、ことしの新米は例年より、いくぶん高くなるのではないかとみられています。

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