アシックスは神戸・三宮の高層ビルに本社を移転する(イメージ)

アシックスは27日、神戸市南部の人工島「ポートアイランド」にある本社を2028年1月に市内中心部の三宮に移転する計画を発表した。国内事業担当の子会社、アシックスジャパンの本社も東京都江東区の自社ビルからJR東京駅に近いJPタワーへ25年5月に移る。アクセスの良いオフィスに移転し、人材確保や情報収集に役立てたい考えだ。

本社が移転するビルは三宮再整備事業の中核で、27年12月に完成予定の高層ツインタワーだ。地上32階、地下3階で延べ床面積は約9万9000平方メートル。神戸市が主導する再開発会社が事業を進めており、バスターミナルやホテル、図書館なども入居する予定だ。アシックスは中層のオフィスエリアの11階から14階部分に、合計で約4000平方メートルを借りて入居する。

ビルが完成するまでは25年1月から順次、神戸市内の4つのビルに仮移転する。ポートアイランドにある現在の本社は自社保有物件だが、築40年ほどで、老朽化による修繕費など維持コストも考慮して移転することにした。東京・江東の自社ビルを含めて、建物や土地の活用方法は今後、検討するとしている。

アシックスは1949年に鬼塚喜八郎氏が神戸市で鬼塚商会を創業したのが始まりで、ポートアイランドの現本社では85年に業務を開始した。売り上げの8割を海外で稼ぐグローバル企業に発展したなか、神戸市内で本社を移転する理由について、広田康人会長兼最高経営責任者(CEO)は「創業の地を大切にしたい」と語る。本社には約650人が勤務するが、「多くが神戸周辺に居住している」ことも大きな要因だ。

本社移転で神戸最大の繁華街である三宮や、山陽新幹線の新神戸駅へのアクセスは良くなる。現本社は神戸空港へのアクセスは良いが、三宮へは神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)などで20分ほどかかる。アシックスでは「東京などともアクセスが良くなり、社内外との往来が活発になる」と期待する。

アシックスは近年、急速に業績を伸ばしている。主力のランニングシューズで高付加価値製品に絞り込む戦略を進め、高価格スニーカー「オニツカタイガー」もインバウンド(訪日外国人)などの需要を取り込んでいる。24年1〜6月期の連結純利益は前年同期比70%増の422億円と、1〜6月期としては2年連続で過去最高を更新。足元の時価総額は約2兆円と過去2年で約4倍になった。

米ナイキに先行された「厚底」のランニングシューズでも、広田会長直轄のプロジェクトチームで製品を開発し、パリ五輪では16年ぶりに着用選手がマラソンでメダルを獲得した。本社移転をきっかけに人材や情報をさらに得やすくし、新たなイノベーションを創出するなどして成長を加速させたい考えだ。

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