日本の代表的な半導体関連株で構成する日経半導体株指数。3月に算出が始まり、値動きが連動する上場投資信託(ETF)も相次ぎ登場している。指数の特徴やETFに投資する利点、注意点を解説する。

生成AI(人工知能)時代が到来し、世界中で注目を集めている半導体産業。半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に、NTTやトヨタ自動車といった大手企業が出資するラピダスが北海道に工場を建設するなど、日本でも大規模な設備投資が進んでいる。製造装置や原材料など、半導体に関連する事業を手掛ける日本の上場企業についても、中長期的な業績成長への期待は強い。

こうした日本の半導体関連企業の株価の動きをひとまとめに捉えられるよう開発されたのが、3月から算出が始まった日経半導体株指数だ。

この指数の算出にあたっては、日本経済新聞社の経済データバンクサービス「日経NEEDS」の業種分類を使用し、主力事業が半導体関連業種に属する銘柄を選別。基準日(毎年10月末)時点の時価総額上位30銘柄を採用する。各銘柄の構成比率(ウエート)は、時価総額に応じて決まる仕組みだ。

今年7月末時点の指数の構成銘柄をみると、東京エレクトロンやディスコ、アドバンテストといった世界的な製造装置メーカーが数多く採用されている。信越化学工業やSUMCOのような材料メーカーも多い。車載向け半導体で高いシェアを誇るルネサスエレクトロニクス、イメージセンサーの世界大手であるソニーグループも構成銘柄となっており、日本の半導体関連企業の多彩さがみてとれる。業種別では電気機器が11銘柄と最も多く、2番手は化学(9銘柄)だ。

構成銘柄全体の時価総額は、7月末時点でおよそ78兆円。東証プライム上場企業全体(同963兆円)の1割近くを構成銘柄だけで占めており、株式市場における半導体関連企業の存在感の大きさが理解できる。今後の日本株相場の行方を占ううえでも、日経半導体株指数の値動きには一段と注目が集まりそうだ。

連動ETF・投信、少額から投資しやすく

有望な銘柄が多い日本の半導体株。ただ個人投資家にとっては、投資に必要な最低額が大きい点がネックになる。

例えば東京エレクトロンの場合、7月末時点の株価は3万1020円。購入は100株単位のため、最低限必要な資金は310万円強となる。日経半導体株指数に採用されている銘柄すべてに投資する場合は、最低でも2800万円以上が必要になる計算で、投資初心者や資金が乏しい個人にはハードルが高い。

少額で投資したい場合、活用しやすいのがETFや非上場の投資信託だ。日経半導体株指数に連動するETFは東京証券取引所に3本上場しており、いずれも1500〜4500円程度から投資できる。三菱UFJアセットマネジメントが運用する非上場の投信も少額から購入可能で、新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠の上限(年240万円)を超えない範囲で投資しやすい。世界株投信や高配当株ETFなどと併せて分散投資する際にも使い勝手が良いといえる。

半導体株の投信は、日経半導体株指数のような株価指数に連動するタイプ(パッシブ型)以外に、アナリストやファンドマネジャーが企業の財務データなどを分析したうえで銘柄を選別するアクティブ型もある。信託報酬をみるとアクティブ型投信は1%を超えるのが一般的なのに対し、日経半導体株指数に連動するETFはいずれも0.2%未満。非上場の投資信託も0.44%と低い。アクティブ型と比べ、コスト面で有利といえる。

利点の多い日経半導体株指数のETF・非上場投信だが、個別の半導体株と同様に、値動きが大きくなりやすい点には注意が必要だ。例えば日経平均が史上最大の下げ幅を記録した8月5日に、日経半導体株指数は15%安と急落し、連動するETFも大幅安となった。上昇局面では日経平均を大きく上回る値動きになりやすいとはいえ、投資する際にはリスクの大きさを十分に理解する必要がありそうだ。

海外では「SOX指数」が代表格


半導体関連銘柄で構成する株価指数として最もよく知られているのが、フィラデルフィア半導体株指数だ。通称「SOX指数」とも呼ばれる。米国の旧・フィラデルフィア証券取引所が算出をはじめ、現在は同取引所を買収したナスダックが公表している。
日本の株式市場に関するニュースのなかでも、前日の米国株市場の動きとともにハイテク株への物色動向を見るためにSOX指数の値動きが解説されることは多い。近年では日経平均株価の値動きに対する半導体関連銘柄の寄与度が大きくなっており、SOX指数と日経平均は連動性が高いという見方もある。
日本でもSOX指数に連動する投資信託は人気で、「ニッセイSOX指数インデックスファンド(米国半導体株)」「楽天・SOXインデックス・ファンド」など純資産残高が100億円を超える投信が複数ある。投信の基準価格は円安効果もあり昨年末比で29%上昇(8月16日時点、SOX指数は24%上昇)している。
もっとも、どのような銘柄で構成されているかは意外と知らないかもしれない。同指数は半導体の設計や製造、流通、販売を行う企業30社で構成される時価総額加重平均型の指数だ。大半が米国企業だが、米国市場に上場するオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングや台湾のTSMCも組み入れられている。
国内で設定された投信の7月末の組み入れ比率の上位はAI向け画像処理半導体(GPU)で市場シェアの9割を握るエヌビディア、半導体大手のブロードコムが10%を超え、以下、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、テキサス・インスツルメンツ(TI)と続く。組み入れ上位は日本でも報じられることが多い銘柄だ。

[日経ヴェリタス2024年9月1日号]

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