伊藤園はタリーズの農園で栽培した豆から作る飲料を発売する

伊藤園はコーヒー豆の調達で子会社のタリーズコーヒージャパン(東京・新宿)との連携を強化する。4日、タリーズの農園で規格外となった豆を伊藤園の飲料に活用したと発表した。タリーズは病害に強い品種の改良にも取り組む。主要なコーヒー豆の生産量が大幅に減る可能性が指摘される「2050年問題」に向け、安定確保につなげる。

伊藤園は4日、コーヒー飲料「TULLY'S COFFEE BARISTA'S BLACK キリマンジャロ」にタンザニア産のキリマンジャロ豆を使用したと発表した。タリーズが栽培する農園で育った豆のうち、サイズなどが理由で採用していなかった豆を初めて活用した。

両社が豆の調達で一時的に連携することはこれまでもあったが、通年で販売している飲料での本格的な連携は初めてという。

タリーズはコーヒー豆の産地のペルーなどで品種の改良にも取り組む。希少価値の高い「ティピカ種」の苗に病害に強い「ロブスタ種」を接ぎ木することで、生産量を増やす。10ヘクタールで3万5000本の栽培を目標として、品種改良した豆を27年までに国内のタリーズなどで販売する計画だ。

こうした取り組みの背景には、コーヒーの2050年問題がある。コーヒー豆流通量の約6割を占める「アラビカ種」の栽培適地が気候変動の影響で50年までに半減してしまうとの予測があり、豆の価格が高騰するリスクをはらむ。

コーヒー価格の上昇はすでに足元で進む。タリーズコーヒーは23年12月、主要メニューで5〜36円の値上げを実施した。

現状のタリーズブランドのコーヒー飲料の販売は好調だ。23年度は前年比4%増の1720万ケースを出荷した。4日に発表した新商品「TULLY'S COFFEE AROMA ESPRESSO(アロマエスプレッソ)」シリーズは苦みを抑えることで、コーヒー飲料を苦手とする若年層にアピールする。伊藤園のマーケティング本部の相沢治ブランドマネジャーは「香りやコクがほしいという声に応える商品に取り組んだ」と話した。

伊藤園は06年にタリーズを買収した。新型コロナウイルス禍で業績が低迷したが、足元では回復傾向にある。店舗数の拡大もあり、24年4月期には売上高が前の期比14%増の403億円と、伊藤園の連結売上高の9%を占めた。営業利益は33%増の32億円だった。コーヒー飲料の需要拡大が今後も見込まれる中、両社はコーヒー豆の調達でも連携し、シナジー(相乗効果)を高めていく。

(柴田唯矢、中島芙美佳)

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