関電の森社長㊥は搬出計画の見直しを福井県の杉本知事㊨に説明した(5日、福井市)

関西電力の森望社長は5日、福井県庁に杉本達治知事を訪ね、県内に立地する原子力発電所で生じた使用済み燃料の搬出に向けた工程表を2024年度末までに見直すと伝えた。搬出先としていた日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の完成延期を受けたもので、前提が崩れたため計画の修正を余儀なくされていた。

説明を受けた杉本知事は「誠に遺憾。立地自治体との信頼関係がなければ原子力事業はない」と不信感を示し、「年度末と言わず早く(新たな工程表を)示してほしい」と要望した。森社長は「おわび申し上げる。私が先頭に立ち、不退転の決意で臨む」と応じた。

再処理工場を建設中の日本原燃は、当初の完成目標を9月末としていたが、8月に26年度中へ先送りを決めた。延期は1993年の着工以来27回目だ。関電は2023年10月、25年度から再処理開始を想定し、26年度から使用済み燃料を搬出する工程表を県に示していたがずれ込むこととなった。

関電は美浜原発(福井県美浜町)など県内3町で計7基を稼働させている。使用済み燃料の蓄積ペースは上がっており、高浜原発(同高浜町)では8月時点で敷地内の保管上限の86%(本数ベース)に達している。今の稼働状況が続けば約3年後には満杯になる見通しだ。

再処理工場の完成が26年度にずれ込んでも「原発内での保管は可能」(関電)としているが、安定的な稼働に影響を与えかねない。

福井県外への搬出を巡っては21年2月、関電の森本孝社長(当時)が「期限までに確定できない場合は、(運転開始から40年を超えている)美浜原発3号機、高浜原発1、2号機の運転を停止する」と約束している。こうした経緯もあり、県は実効性ある計画を示すよう関電に求めてきた。

関電は日本原燃に約17%出資する。再処理工場を認可する原子力規制委員会による審査対応にあたったり、建設に関わったりする人員を確保するため、関電から日本原燃に約40人を派遣するなど、事業の一翼も担っている。森社長は「増員やどういう(資質の)スタッフが必要かは今後、日本原燃と相談する」と述べた。

関電は原発の新増設やリプレース(建て替え)を視野に入れている。それだけに、規制委の審査に対応し期日通りに完工できなければ、脱炭素の柱である原発を前面に打ち出す関電の経営への打撃は避けられない。

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