流通大手の「セブン&アイ・ホールディングス」は、カナダに本社があり、世界各国でコンビニやガソリンスタンドなどを手がける「アリマンタシォン・クシュタール」から買収提案があったことを明らかにしていて、社外取締役のみで構成される特別委員会を設置して、提案を受け入れるかどうか検討を行っています。
関係者によりますと、会社は5日、定例の取締役会を開き、この中で特別委員会から現段階でのセブン&アイとクシュタール社双方の事業評価のほか、提案を受け入れるメリットとデメリットなどについて、報告を受けたということです。
これに対して取締役会では、買収提案を受け入れるかどうかの判断を5日の時点では保留した上で、クシュタール社と対話を続けていくことを確認しました。
その上で買収提案を行った背景や日本のコンビニ事業への関心などを見極めるために、近くクシュタール社に対し、改めて提案の狙いを確認する方針です。
セブン&アイはクシュタール社からの回答のほか、特別委員会による事業価値や買収価格の妥当性に関する調査結果などを踏まえ提案を受け入れるかどうか判断するものとみられます。
アリマンタシォン・クシュタール 積極的買収や合併で事業拡大
カナダに本社を置く「アリマンタシォン・クシュタール」は、コンビニやガソリンスタンドを運営するグローバル企業です。
1980年にカナダのケベック州にコンビニの1号店を出店したあと、アメリカの「サークルK」の運営会社やヨーロッパでガソリンスタンドを運営するノルウェーの会社を買収するなど、積極的に買収や合併を行って事業を拡大してきました。
会社のホームページによりますと「クシュタール」や「サークルK」などのコンビニチェーンを展開し、北米地域とヨーロッパを中心におよそ30の国と地域に1万6000を超える店舗があります。
多くの店舗はガソリンスタンドに併設され、サンドイッチやピザといった食品や飲み物を販売するなど日本のコンビニとは異なる形態をとっています。
会社が発表したことし4月期の決算では2024年1年間の売上高は692億ドル、日本円でおよそ10兆円で、このうち7割以上がガソリンなど燃料の販売が占めています。
セブン&アイもアメリカでの積極的買収で事業拡大
買収提案を受けた「セブン&アイ・ホールディングス」もアメリカでの積極的な買収によって事業を拡大してきました。
会社がコンビニのビジネスに乗り出したのは1973年、「7ーELEVEN」をチェーン展開していたアメリカの企業とのライセンス契約がきっかけでした。
その後、国内でコンビニ事業を成長させたセブン&アイは、2005年、アメリカの「7ーELEVEN」の株式を取得し完全子会社とし、アメリカへの進出を加速させていきます。
さらに、2021年、業界3位の店舗数を占めていた「スピードウェイ」を買収。
アメリカでの店舗数は1万3000あまりに拡大し、2位のクシュタール社を大きく引き離す業界最大手となりました。
スピードウェイの買収にはクシュタール社も名乗りを挙げたとされますが、セブン&アイの買収によってアメリカ市場での両社の差はさらに開くことになりました。
ことし2月期のセブン&アイの決算では、売り上げにあたる営業収益11兆円あまりのうち、およそ7割を北米事業が占めています。
店舗数ではアメリカのおよそ1万2500店に対して日本はおよそ2万1500店と大幅に上回っていますが、ガソリンスタンドを併設する店舗が多いアメリカではガソリン販売による売り上げが大きく、グループ全体の収益の柱となっています。
専門家 “買収提案の狙い セブン&アイのアメリカの店舗網”
クシュタール社の買収提案の狙いについて、流通業界に詳しい専門家はセブン&アイが持つアメリカの店舗網にあると指摘します。
桃山学院大学経営学部の小嶌正稔教授はアメリカでのコンビニ事業をめぐって「大きな企業買収の案件があるとセブン&アイとクシュタール社がいつも争っていた。セブン&アイは大都市を中心に幅広い店舗網を持っているので、クシュタール社は買収によってそれを一挙に手に入れることができる。アメリカのコンビニ事業の主導権を握るため、この買収に大きなメリットがあると判断したと思う」と述べました。
さらに「『セブンーイレブン』は7万弱の店舗がアジアにある一方で、クシュタール社は1500程度とアジアでの販売網が弱い。セブン&アイを買収すればアジアの市場をおさえることもできるので、各国に店舗網を広げる上でセブン&アイの買収は欠かせない要素だ」と指摘しています。
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