12日、組合投票でストライキに賛成を呼びかける組合員(米西部ワシントン州シアトル郊外)=AP

【ヒューストン=花房良祐】航空機大手の米ボーイングの労働組合は12日、執行部が会社と合意した労働協約を組合投票で否決し、13日からストライキに入ることを決めた。シアトル郊外の工場群が対象で、ストは16年ぶり。賃上げの幅が十分でないなどとする意見が組合員の間で台頭した。経営再建中のボーイングにとっては打撃となる。

米西部ワシントン州シアトル郊外の工場群などが13日から操業を停止する。小型機「737MAX」や大型機「777」の生産が止まる。

ワシントン州などの工場で働く従業員3万人以上が組合に加盟しており、16年ぶりの新規の労働協約の全面交渉をしていた。8日の労使交渉ではいったん執行部が会社と合意に達し、執行部が組合投票で合意案への賛成を呼びかけていた。

12日の組合投票では①協約への賛否、②ストへの賛否――の2つを問い、過半数が協約に反対しても、3分の2がストに賛成しなければ協約は自動発効するはずだった。だが合意案は反対約95%で否決されたうえ、ストが約96%の賛成を集める異例の展開となった。

背景には賃上げ幅や社会保障に対する不満がある。組合は当初、40%の賃上げを目指していたが、執行部が会社に歩み寄って4年間で25%の賃上げ幅に縮小した。米国ではインフレで賃上げが物価高に追いついていないと感じる世帯が多く、組合員の怒りを買った。

社会保障を巡っても注文が相次ぐ。ボーイングは2018〜19年の2度の737MAXの墜落事故や新型コロナウイルス禍などで収益力が低下し、従業員の社会保障を削った。年金や医療保険で会社はもっと負担すべきだとの考えを抱いている組合員が多く、ストで権利獲得を目指すべきだとの意見が大勢を占めた。

8月に就任したばかりのケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は工場に自ら足を運んだり組合員にメッセージを寄せたりして賛成を促してきたが、必死の呼びかけも実らなかった。

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