城口洋平・前CEOは自身が持つエネチェンジ株を競合他社に譲渡しようとしたという(写真はエネチェンジのEV充電器)

ENECHANGE(エネチェンジ)は24日、電気自動車(EV)充電事業を巡る会計処理問題の経緯や再発防止策をまとめた改善報告書を東京証券取引所に提出した。7月に引責辞任した前最高経営責任者(CEO)の城口洋平氏が在任中、自身が持つ同社株について競合企業への譲渡を計画するなど利益相反の恐れがあったとし、辞任につながった経緯を明らかにした。

城口氏の経営責任を問うため2カ月分の月額報酬の返納を要請した。城口氏は弁護士を通じて返納する意思を示しているという。エネチェンジは「城口氏は大株主として株式を保有しているが、今後は一株主としての関係にとどめ、同氏の影響を受けずに事業や経営を遂行していく」とした。

報告書によると、6月時点で同社株の約16%を持つ筆頭株主だった城口氏は7月ごろ、競合企業の社長への株式譲渡を検討していた。同氏はエネチェンジ株を担保として金融機関から個人で資金を借り入れていた。3月に発覚した会計処理問題による株価急落を受け、保有株の担保としての価値が下がると強制的な売却を迫られる可能性があった。

エネチェンジは城口氏が競合への株式譲渡を検討したのは、保有株を少しでも高く売り抜けようとしたためとみている。さらに未公表の情報があるなか、それを明らかにせずに株式を譲渡すればインサイダー取引にあたる恐れもあった。利益相反にあたるとみたエネチェンジは城口氏に譲渡をやめるよう要請した結果、譲渡は実現しなかったという。

エネチェンジの会計処理問題は、会計不正を疑ったあずさ監査法人の指摘で発覚した。外部調査委員会が6月、不正はなかったと結論づけたものの、内部統制に問題があったと指摘した。一方、あずさは城口氏の不正を主張し、会計監査人を辞任した。城口氏は一連の混乱を招いた責任を取って7月末で辞任したが、企業のブランドは大きく傷ついた。

報告書ではこのほか、社外取締役ら4人や監査役ら3人について「執行側へのけん制・監督機能が十分に働いていなかった」と指摘した。日岡篤史常勤監査役が月額報酬の10%の3カ月分の自主返納を申し出たほか、他の監査役や社外取締役からも月額報酬の10%の自主返納の申し出があり、これを受理したという。

会計処理問題の焦点となった特別目的会社(SPC)スキームの検討に携わった執行役員や前最高財務責任者(CFO)の責任についても明記したものの、執行役員が自ら辞任したことや前CFOがすでに退職していることなどを考慮し、処分しなかった。

再発防止策は7月末の株主総会の継続会の直前に公表しており、同様の内容を改善報告書に盛り込んだ。代表取締役をCEOと最高執行責任者(COO)の2人体制にするほか、CFOの任命や人事評価の担当者をCEOから社外取締役に変更するなどしてガバナンスの向上を目指す。それぞれの措置は24年中に全て始めるという。

今回の改善報告書は有価証券報告書の訂正を受けて、問題の経緯・原因や再発防止策を説明する資料となる。24日までに東証に提出・公表を求められていた。

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