安川電機は4日、2024年6〜8月期の受注額が前年同期比1%増の1263億円だったと発表した。四半期ベースのプラスは7期ぶり。半導体製造装置向けのモーターなどの需要が回復した。ただ、半導体市場の戻りは想定を下回ったほか、中国の市況も回復が鈍い。25年2月期の連結業績(国際会計基準)では売上高の下方修正に追い込まれた。

ビジネスTODAY ビジネスに関するその日に起きた重要ニュースを、その日のうちに深掘りします。過去の記事や「フォロー」はこちら。

安川電機は自動車などの製造工程に使う産業用ロボット、工作機械や半導体製造装置に組み込む「サーボモーター」、モーターの回転速度を制御する「インバーター」が主力。製造業の様々な場面で使われる製品を広く手掛けているため、同社の決算発表は製造業の業績を占うとして注目度が高い。

「米国や韓国で半導体関連のサーボモーターが戻っている」。4日の決算説明会に登壇した安川電機の村上周二専務執行役員は受注回復の手応えを強調した。サーボモーターとインバーターなどモーションコントロール事業は、6〜8月期の受注額が15%増と8期ぶりにプラスとなった。ロボット事業も3%増と2期連続のプラスだった。

地域別の受注額は明暗が分かれた。同社の売上高は日本が約3割、米州と中国が約2割。日米、インドなどのアジアはプラスだったが、欧州や中国はマイナスとなった。米州での石油・ガス向けのインバーターなどが全体を押し上げたが、中国では自動車向けロボットなど全般的に低調だった。

受注は7四半期ぶりのプラスだったとはいえ、業績が急回復するほどの大きな増加ではなかった。中国企業の保有株売却などで25年2月期の連結純利益を前期比26%増の640億円と従来予想から100億円上方修正した。一方、売上高にあたる売上収益は4%減の5530億円、営業利益は3%減の640億円と、それぞれ従来予想から270億円、60億円下方修正した。

小川昌寛社長は「中国と半導体の回復基調は期待値とギャップがあった」と下方修正の要因を述べた。

中国では景気の先行きに慎重な見方が広がる。中国国家統計局が発表する製造業購買担当者景気指数(PMI)は9月まで5カ月連続で好調・不調の境目である50を下回る。過去には投資が盛んだった電気自動車(EV)や太陽光パネル、スマートフォンに関連した設備投資が弱含み、安川電機の受注にも影響している。

半導体分野では、業界団体SEMIが24年の製造装置の市場を前年比3%増の1000億ドル規模と見込んでいる。前年に在庫過多で市場が縮小した状況から回復するとされる。ただ、「半導体関連は国内が想定以上に遅れている」(村上周二専務執行役員)としており、地域ごとの回復速度にばらつきがありそうだ。

安川電機は中期経営計画で26年2月期に売上収益を6500億円、営業利益を1000億円とする目標を掲げる。25年2月期の営業利益を下方修正したが、小川社長は「付加価値の増加や間接費の適正なコントロールができれば収益性が高まる。営業利益の目標は撤回しない」と強調する。その一方で「(25年2月期予想の)5500億円規模から1年間で1000億円を挽回するのは楽観的に想定できる数字ではない」とみる。

同社は4日、株主還元などを目的に125億円を上限とする自社株買いも発表した。

(細田琢朗)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。