記者会見するじもとHDの鈴木隆社長(26日、仙台市)

じもとホールディングス(HD)が傘下の仙台銀行ときらやか銀行の両頭取を含む経営トップの全面刷新という異例の人事に踏み切る。きらやか銀が2024年3月期に大幅赤字に転落し、9月末に迫った200億円の公的資金の返済が困難となり経営責任をとる。東北地銀の一角で経営の屋台骨が大きく揺らぎ、地域経済への影響が懸念される。

26日午後5時30分、じもとHD社長で仙台銀頭取を務める鈴木隆氏が仙台市で、同HD会長できらやか銀頭取の川越浩司氏が山形市で、同時に記者会見した。

鈴木氏はきらやか銀の経営不振について「取引先にご心配お掛けすることに深くおわび申し上げる」と陳謝した。200億円分の公的資金について国との間で返済期限の延長を含めた協議を開始することを表明。協議にめどが立った時点でじもとHDの会長、社長と、きらやか銀の頭取が引責辞任するとした。後任は未定。

きらやか銀は同日、24年3月期の業績予想を下方修正し、最終損益が当初予想の7億円の黒字から244億円の赤字に転落すると発表した。

じもとHDの鈴木社長は「大口の粉飾決算など新たな事実が出てきて(与信関係費用を)抜本的に見直した結果、多額の計上に至った」と話した。

きらやか銀は近年経営不振にあえぎ、リーマン・ショックの影響で09年に200億円の公的資金を受け入れた。東日本大震災後の12年に追加で100億円を、23年9月には180億円が注入された。23年3月期の決算ベースで自己資本比率に占める公的資金の割合は9割に迫る勢いとなっている。

24年9月に200億円分の返済期限が控えていたが、きらやか銀の業績悪化で返済は困難となった。

傘下の仙台銀も26日、坂爪敏雄常務が6月に頭取に昇格する人事を発表した。鈴木頭取は代表権のない会長に退く。記者会見で鈴木頭取は「仙台銀は12期連続の黒字決算で、引責辞任ではない」と強調した。

東北地方では半導体関連産業の集積が進み、SBIホールディングスと台湾の力晶積成電子製造(PSMC)が宮城県大衡村に半導体新工場を建設する計画もある。じもとHDはSBIHDと資本業務提携しており、仙台銀は半導体産業への関与をテコに成長戦略を描く。

傘下2行の今後の関係性を問われた鈴木社長は「じもとHDとして組むことで地方創生を目的としている主眼は変わっていない」と強調した。「(仙台銀の)斎藤義明専務をきらやか銀に送り込むなどの支援をする。SBIも支援を約束いただいており、再建を見守っていただきたい」と述べた。

記者会見するきらやか銀行の川越頭取(26日、山形市)

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