日銀は26日、大規模な金融緩和策からの転換後、初となる金融政策決定会合を開いた。政策金利(無担保コール翌日物)は現行の0~0・1%程度とし、低金利政策を維持することを全会一致で決めた。日銀が目指す2%の物価上昇率に到達する可能性が高まるか、引き続き見極める必要があると判断した。
日銀の低金利政策の維持を受け、外国為替市場では高金利のドルを買って円を売る動きが加速。この日午後、記者会見した植田和男総裁が「基調的な物価上昇率が上昇していけば金融緩和の度合いを調整するが、当面は緩和的な金融環境が継続する」などと述べたことを受け、更に円安が進行した。円相場は一時1ドル=156円台後半となり、1990年5月以来、約34年ぶりの安値水準まで下落した。市場では、政府・日銀による円買い・ドル売りの為替介入への警戒感が高まっている。
日銀は同日午後、日本経済の中長期の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表し、向こう3年間にわたって日銀が物価安定目標として掲げる2%程度上昇を実現できるとの道筋を示した。2024年度の消費者物価指数(変動の大きい生鮮食品を除く)上昇率の見通しは前年度比2・8%とし、前回1月時点(2・4%)から引き上げた。円安や原油価格上昇のほか、再生可能エネルギーの普及のために電気料金に上乗せしている「再エネ賦課金」の増額を加味した。
25年度も1・9%(1月時点は1・8%)に上方修正した。今回初めて示した26年度は1・9%とした。
日銀は3月の前回会合で、マイナス金利を解除し、約17年ぶりの利上げを決めたばかりだ。今会合の議論の焦点となったのは、急速に進む円安や企業の賃上げが、物価にどのような影響を与えているかだ。
日銀では一時的な物価高の影響などを除き、賃金や物価が好循環を描いて上がっていく「基調的な物価上昇」を重視している。サービス業などで価格転嫁が進み、物価上昇が基調的に2%に向けて上昇するか、経済データなどを見極める必要があると判断し、追加利上げは見送った。植田総裁は記者会見で「(現時点では)基調的な物価上昇率はまだ2%を下回るので、緩和的な金融環境が適当だ」と説明した。
市場では、円安の進行が追加利上げの判断に影響を及ぼす可能性に注目が集まっている。植田総裁は現時点では「基調的な物価上昇率への大きな影響はない」とした上で、「円安が物価上昇率に影響して25年春闘の賃上げにも影響することが予想できれば、もっと手前で(利上げを)判断できる」と話し、判断材料になり得るとの考えを示した。一方、円安による物価高などを念頭に「実質所得が下押しされて消費に悪影響が及ぶ可能性もゼロではない」と述べ、為替の影響を慎重に見極める姿勢を強調した。
日銀が現行の低金利政策の維持を決めたことで、日米の金利差が当面開いた状況が続くとの見方が市場に広がった。植田総裁の会見中には一時156円80銭台まで円安・ドル高が進んだ。消費減退を招きかねない円安の進行で、政府・日銀の対応が注視されるが、鈴木俊一財務相は同日午後、記者団の取材に対し「しっかりと対応していく」と述べるにとどめた。政府・日銀による為替介入への警戒感から、植田総裁の会見後には一時154円台を付けるなど円高に振れる場面もあった。
東京株式市場では政策の維持を受けて買い注文が広がり、日経平均株価(225種)の終値は前日比306円28銭高の3万7934円76銭で取引を終えた。【竹地広憲、浅川大樹、山下貴史】
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