順天堂大学は21日、2024年中にもパーキンソン病の患者に健康な人の便から取った腸内細菌を移植すると発表した。腸内細菌の乱れとパーキンソン病の発症リスクが関連するとの研究があり、今回の臨床研究で移植の治療効果や安全性を確かめる。
パーキンソン病は手足の震えなどの運動障害が起きる難病で、進行すると認知症になることもある。病気の仕組みに作用して進行を抑える薬はまだない。順天堂大の服部信孝主任教授は21日の記者会見で「腸内細菌移植でパーキンソン病の進行を緩やかにできれば、認知症の発症を抑えられるかもしれない」と期待を語った。
スタートアップのメタジェンセラピューティクス(山形県鶴岡市)と共同で、パーキンソン病進行期の患者約30人を対象に臨床研究を実施する。抗菌薬で患者の腸内細菌をいったん除き、半数には健康な人の腸内細菌を含む溶液を内視鏡で投与する。残り半数には細菌を含まない溶液を投与する。
投与から約2カ月後、パーキンソン病の症状を示すスコアの改善の度合いなどを調べ、細菌を投与しなかった患者と比べて治療の効果を検証する。近年の研究により、パーキンソン病患者は腸内細菌のバランスが大きく変化していると分かってきた。腸内細菌の乱れが一因となる腸炎により、パーキンソン病の発症リスクが高まることも判明した。
人の腸内には1000種類以上、約40兆個の腸内細菌がすんでおり、代謝物などを通して人体と密接に関係している。腸内細菌を移植する治療法の研究はパーキンソン病以外でも進む。
23年には順天堂大などが潰瘍性大腸炎患者を対象に先進医療を始めた。24年8月には国立がん研究センターと順天堂大、メタジェンセラピューティクスが、がん患者に腸内細菌を移植してがん免疫薬の効果向上を狙う臨床試験を始めると発表した。米国では22年、病原性の腸内細菌による大腸炎の治療法として承認された。
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