経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は23日、中国地方政府などと進めていた有機ELパネルの工場建設に向けた協議を中断したと発表した。10月末を期限としていた。安徽省蕪湖市でJDIが独自に開発した有機ELを2026年以降に量産する計画だったが、同市と「最終契約締結に至らなかった」とした。JDIは新たな再建策を迫られることになる。
JDIは23年9月に蕪湖市と新工場を建てる計画について覚書(MOU)を結び、詳細な交渉を進めてきた。中国地方政府や現地企業から資金調達をし工場を建設し、JDIが工場を運営する予定だった。JDIは工場建設の直接投資を行わずに、有機ELパネルの生産能力を50倍以上に拡大できるとしていた。
24年3月期まで10期連続の最終赤字を計上しており、売上高はピーク時の4分の1に縮んだ。投資会社のいちごアセットマネジメント傘下でスマートフォン向けの液晶パネルからの撤退を決め、他社との提携による有機ELパネルの量産計画を経営再建策の柱に据えていた。
JDIは23年9月に中国パネル大手の恵科電子(HKC)との有機ELパネルの量産に関する提携交渉が破談となり、蕪湖市との工場建設計画の交渉を始めた。交渉期限は23年12月、24年3月に2度延期し、24年10月末の期限までに交渉がまとまらなかった。
JDIは協議中断の理由について「秘密保持契約があるため答えられない」とした。JDIは「蕪湖市とは1年間協議した友好関係がある。今後中国当局が再度蕪湖市に申し入れがあればプロジェクトが復活する可能性もある」などとしている。
安徽省では、中国ディスプレーメーカーの維信諾科技(ビジョノックス)が24年5月に同省合肥市で有機ELパネルの工場建設を発表した。ディスプレー業界では、省政府側が政府補助金の支給先としてビジョノックスを選んだとの見方も出ている。
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