丸紅は25日、国内で陸上養殖したアトランティックサーモンの本格販売を始めたと発表した。首都圏のスーパーなど販売店舗を順次拡大し、2025年4月にも全国で安定供給する。店に並ぶ商品の鮮度が輸入品に比べて高いうえ、輸送に伴う二酸化炭素(CO2)排出量が減るなど環境負荷の軽減にもつながる。
ノルウェー企業、プロキシマーシーフードの日本法人が静岡県で養殖したアトランティックサーモン「フジアトランティックサーモン」を販売する。身質は海面養殖で育てたノルウェー産サーモンと同等で、すしや刺し身といった生食に適している。
生産方法は「閉鎖循環式」と呼ばれる水を浄化・消毒して再利用する仕組みを採用している。糞(ふん)や食べ残ったエサで汚れた水はバクテリア分解と散水で浄化する。飼育用水槽で使う水の再利用率は99.7%となり、海面や他の陸上養殖に比べて環境負荷が小さい。自然環境とは異なり寄生虫の影響を受けないため、抗生物質などの投与を減らせる利点もある。
価格は輸入品と同程度を見込む。加工・熟成を含めた輸送時間は3〜4日だ。輸入品の4〜7日より短いため、鮮度の良い商品をスーパーや飲食店に安定供給できる。プロキシマーのヨアキム・ニールセン最高経営責任者(CEO)は25日の説明会で「ブランドを日本で浸透させる。日本に限らず海外でも通用するだろう」と自信を見せた。
プロキシマーは生産量を段階的に増やし、27年までに年産5300トンと国内最大規模に高める計画だ。丸紅は日本での独占販売契約をプロキシマーと結んでおり、スーパーのほか百貨店や鮮魚卸に供給する。丸紅シーフーズの矢野雅之社長は「国産の閉鎖循環式養殖のプレミア価値を理解していただけるお客さまに販売していく」と話す。
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