ここ数カ月は円高が進んでも株価は大崩れせず

 衆院選から一夜明けた週明け28日の金融市場は、円安と株高で反応した。政治情勢の不透明感などから円が売られる一方、株価が反発したのはなぜなのか。

 与党が過半数割れし、当初の見立てでは「与党が大敗すれば株安の可能性があった」(市場関係者)。ところが、東京株式市場の日経平均株価は28日の取引開始直後に一時的に下落した後、すぐに反転。上げ幅は一時800円を超え、ほぼ全面高の展開となった。終値は前週末比691円61銭高の3万8605円53銭。

 株価は先週、上値が重い展開が続き、解散前と比べ1000円以上下落していた。衆院選終盤の情勢報道で与党の苦戦が伝えられ、市場では「自公で過半数割れ」の可能性が先週の間にある程度織り込まれていた可能性がある。選挙結果が判明し、今後の政治シナリオを予測しやすくなり、市場に多少の安心感が広がったようだ。大和証券の林健太郎シニアストラテジストは「これまでの自公政権の枠組みが持続するとの見方から買い戻しが入った」と分析する。

 東京外国為替市場では円売りが加速し、一時は1ドル=154円に迫る場面もあった。円安や前週末の米国市場でIT関連株が上昇したことも、この日の株高の支えとなった。

 一方、28日に円安・ドル高が進んだ要因は、米国の景気が堅調な一方で、日本は自公敗北で政権運営が不安定になるとの見方が広がったことが大きい。今後は日本維新の会や国民民主党など野党との連携が取り沙汰されている。アナリストの一人は「積極財政と金融緩和を主張する野党の声が強まると、日銀の利上げ時期が後ろ倒しになる見方が膨らみやすい」と指摘。来週には米大統領選が控えており、今後も日米の金利差拡大が意識されて円安傾向が続く可能性がある。

 10月前半まで円相場は1ドル=140円台の円高傾向で推移したが、株価は3万6000~3万9000円台で大崩れはしなかった。今後、円安傾向が続けば株高が意識されるが、上昇傾向を続けられるかどうかは不透明だ。石破茂首相は28日の記者会見で野党側の政策を一部受け入れる姿勢を示したが、野党の対応を含め先行きは選挙後も視界不良の状況がしばらく続きそうだ。

 株式市場では「政局関連の報道に一喜一憂する展開が想定される」との見方が広がる。大和証券の林氏は「しばらくは膠着(こうちゃく)する展開が続く可能性がある」と指摘する。【井口彩、成澤隼人、浅川大樹】

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