欧州連合(EU)は29日、中国から輸入した電気自動車(EV)に最大35・3%の追加関税を課すことを正式に決めた。30日から5年間、従来の関税率である10%に上乗せする。EUは、中国政府の中国メーカーへの過剰な補助金が競争環境をゆがめているとして中国側と交渉していたが折り合えなかった。中国の反発は必至で、通商対立が激しくなる懸念がある。
EUの行政執行機関である欧州委員会によると、中国勢のEVは欧州勢より2割ほど安く、低価格を武器に市場占有率(シェア)を2020年の1・9%から24年4~6月には14・1%まで急伸させている。一方で、減税や好条件での融資などの間接的な形も含めた過剰な補助金に支えられているとも指摘されており、欧州委は昨年10月から調査を開始。7月には、競争環境をゆがめていると断定し、是正に必要と見込んだ暫定関税率を示していた。
これを受けてEU加盟27カ国は10月4日に投票を実施。賛成10、反対5、棄権12となり、欧州委は課税に必要な支持を得た。その後も中国側と最低価格の設定などの解決策について協議したが、溝は埋まらなかった。
中国大手への追加関税率はそれぞれ、上海汽車(SAIC)の35・3%で最高で、吉利汽車(Geely)は18・8%、比亜迪(BYD)は17%。各社との交渉などの結果、7月に示した暫定税率から0~2%ほど下げた。中国で生産する米テスラは7・8%。
EU高官は、追加関税について「公平な競争をするのが目的だ」と強調した上で、今後も中国と交渉を続ける意思を強調するが、中国はそもそも過剰な補助金の存在を否定している。8日にはEU産ブランデーに対する暫定的な反ダンピング(不当廉売)措置を発表しており、今後さらに対立が激しくなる懸念がある。
また、中国勢については「まだ値下げ余地を残している」(業界関係者)との見方もあり、関税を引き上げても販売価格を据え置いたり、値上げ幅を抑えたりして引き続き販売攻勢をかける可能性もある。【ブリュッセル岡大介】
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