中東情勢の緊迫が長期化し、コンテナ船運賃は高止まりが続いた

商船三井は31日、2025年3月期(今期)の連結純利益が前期比34%増の3500億円になる見通しだと発表した。従来予想(28%増の3350億円)から150億円上方修正した。中東情勢の緊迫が長期化し、コンテナ船運賃の夏までの高止まりが寄与する。株主還元の拡充へ、1000億円を上限とする自社株買いと配当の上積みも併せて発表した。

売上高は10%増の1兆7900億円と、従来予想(11%増の1兆8150億円)から250億円引き下げた。営業利益は48%増の1530億円と、計画から30億円減る見通しだ。鉄鉱石などの荷動きが、年明けからブラジルの雨季で一時的に落ち込むと見込む。

業績をけん引するのはコンテナ船事業だ。経常利益は41%増の3650億円と、従来予想から150億円引き上げた。持ち分法適用会社のコンテナ船会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」の業績が上振れする。今期の税引き後利益は3.2倍の30億9500万ドル(約4700億円)と、従来予想(27億4500万ドル)から増える。

中東を通る航路を避けようと、運航日数が増加する遠回りの喜望峰ルートが定着した。到着の遅れといった輸送網の混乱に備え、荷主の間には出荷を前倒しする動きも目立つ。紅海ルートへの正常化は25年1月の想定から、同年4月に見直した。

船腹の需給が引き締まり、運賃は夏まで上昇傾向が続いた。国際的なコンテナ船の運賃市況の目安となる上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)は7月5日、昨年末比2倍の3733を付けた。

足元で運賃はピークアウトした。商船三井の浜崎和也取締役は同日の決算会見で、駆け込み需要の反動や大量の新造船の就航で「9月ごろから運賃の下落が想定より早くなっている。年度末にかけて運賃が下落する見通し」と話した。5億ドルを見込んでいたONEの下期の税引き後利益の見通しを、3億1700万ドルに引き下げた。想定より運賃の下げが進めば、利益が下振れする可能性がある。

株主還元も強化した。同日、1000億円を上限とする自社株買いを発表した。発行済み株式総数(自社株を除く)8.28%にあたる3000万株を上限に買い付ける。期間は11月1日〜25年10月31日とした。

橋本剛社長は「これまで投資の積み上げを優先したきたが、増強された投資余力や財務状況、同業他社比較で割安な水準にとどまっている株価を勘案した」と話した。投資指標となるPBR(株価純資産倍率)は足元0.7倍台で、ともに0.8倍台の日本郵船株や川崎汽船株に比べて低かった。

取得する株式はM&A(合併・買収)に活用する考えも示した。橋本社長は「海外などで大きな規模のM&Aが実現できる可能性がある。キャッシュだけでは厳しいので、安いうちに自社株を買い集めておきたい」と説明した。

年間配当は300円(前期実績は220円)と従来予想から20円積み増した。

決算発表後の31日の商船三井株は前日比一時6%高の5360円まで上昇した。楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは「PBRを意識した自社株買いは下値の安心感につながる。上方修正を素直に好感した買いが短期投資家中心に入っている」とみていた。ONEに共同出資する日本郵船や川崎汽船株も上昇した。

同日発表した24年4〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比14%増の9006億円、純利益が64%増の2466億円だった。

(鎌田旭昇)

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