東京電力ホールディングスは5日、福島第1原子力発電所2号機の溶融燃料(デブリ)の試験取り出しを巡り、専用の器具がつかんだデブリの放射線量が回収可能な基準値を下回っていると発表した。原子炉格納容器につながる金属製の箱からの取り出し作業を6日に始める。

東電が5日に、つかんだ大きさ5ミリ程度のデブリの放射線量を測定した。作業員や周辺住民への影響を考慮し、20センチメートルの距離からの換算値で毎時24ミリシーベルトを下回った場合に回収するとしていた。測定の結果、毎時およそ0.2ミリシーベルトであることが分かった。

6日に取り出しへの本格作業に着手する。まず金属製の箱の中で、デブリをアルミニウム製の容器に入れる。東電は6日の作業はここまでだと説明した。

その容器を箱の外に出し、ポリエチレン製の専用コンテナに収納した時点で、同社は今回の試験取り出しを成功と位置づける。取り出しは7日以降になる見通しだ。

10月30日に爪状の器具がデブリをつかんだ=東京電力ホールディングス提供

デブリを取り出せれば、2011年3月の東日本大震災での事故後初めてとなる。

試験取り出しに成功した後は福島第1原発の敷地外に運び出すための準備作業を進める。外気と遮断した環境のもとで重さや放射線量を確認し、さらに遮蔽能力が高い特別な容器に入れて運搬する。

デブリは国の研究機関である日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗研究所(茨城県大洗町)に運ぶ。数カ月程度かけて表面の元素分布などを分析し、組成を探る。

デブリの取り出しは、1979年に炉心溶融事故を起こした米国のスリーマイル島原発2号機以外に例がない。福島第1原発のデブリは1〜3号機に計およそ880トンあるとされる。

試験取り出しを巡っては、8月の作業開始直前に装置の接続ミスが判明し、開始が遅れていた。9月に着手したものの、カメラの不具合で作業を中断した。再開後の10月28日に釣りざお式装置を原子炉の格納容器内に入れ、同30日に装置先端の爪状の器具がデブリをつかんでいた。

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