キオクシアの渡辺副社長㊧(5日、岩手県北上市)

キオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)は5日、北上工場(岩手県北上市)の第2製造棟竣工に伴う式典を開催した。2025年9月から最先端の第8世代のNAND型フラッシュメモリー「BiCS8」を量産する。渡辺友治副社長は同日開いた記者会見で新棟について「人工知能(AI)を活用しコスト競争力ナンバー1目指す」と語った。主な一問一答は以下の通り。

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――北上第2製造棟で25年9月からBiCS8を増産します。

「他社に先駆けて、AIのスペックや顧客の要求に応える性能の製品を出せている。サンプルの評判も非常に良い。ラインアップを拡充して需要に細やかに対応したい。25年以降は堅調にNAND需要が伸びるとみており、BiCS8のような高性能メモリーの需要が増える。26〜27年に来るAI需要の波に対応できる準備ができた」

――キオクシアはAI向けNANDのシェア獲得で他社に後れを取っていませんか。

「22年から生産調整をいち早く実施したためだ。今は遅れているように見えるが、この間にBiCS8を開発した。今後はシェアを伸ばしていける」

――稼働が1年後になる理由は。AI需要を取りこぼす懸念はありませんか。

「現在は四日市工場(三重県四日市市)の第7製造棟でBiCS8を生産しており、まだスペースがあり、需要増に対応できる。北上の第2棟が来年秋に稼働すれば十分に需要に対応できる」

――北上第2棟の稼働でキオクシアの競争力は高まりますか。

「これまで四日市で立ち上げた技術を北上に移管してきた。北上は生産効率を最大まで上げて量産に特化した工場だ。米ウエスタンデジタルとの協業に加え、キオクシアの知見と経験をベースにしたAIをふんだんに活用したクリーンルームにするのが北上第2製造棟のコンセプト。第1棟以上に製造効率を上げ、コスト競争力で世界ナンバー1を目指す」

――さらなる生産能力の増強は検討していますか。

「あらゆる可能性と市場を調査して規模の拡大を目指す。北上工場の南側にはスペースを用意してあり、適切なタイミングで投資をしていく」

――新規株式公開(IPO)の時期や進捗は。

「市場動向を考えて決定する方針であり、現時点で申し上げることはない。(資金調達については)足元の業績をみると、当面の資金的なリスクはない」

――(最先端半導体の量産を目指す)ラピダスへの追加出資は検討しています。

「今後、協業できることがないか検討したい。出資するかどうかは現時点でコメントは差し控える」

――NANDはDRAMほどAIの需要を取り込めていません。専業メーカーとして、NANDの価値をどう高めますか。

「専業メーカーであることで顧客との信頼関係が築きやすい。技術協力やコスト競争力でも先手を打てる。顧客の要求に対して技術で先行し応えるのが基本的な価値だ。半導体市況の波はあるが、技術力で見劣りしない価値を提供していく」

(聞き手は向野崚)

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