DG Daiwa Venturesの中島淳一代表

デジタルガレージと大和証券グループ本社が共同出資するDG Daiwa Ventures(東京・千代田)が3号ファンドを設立した。人工知能(AI)やフィンテック分野で国内外のスタートアップに投資する。中島淳一代表にベンチャーキャピタル(VC)としての特徴や投資戦略について聞いた。

――VCとしての特徴や強みを教えてください。

「シードやアーリーなど初期段階の企業に投資している。国内だけでなく欧米やアジアなど境界を設けずにグローバルな企業に投資していることが特徴だ」

「グローバル市場で投資をするには言語だけでなく、誠実な対応や役立つ意見の提案などビジネス上の基礎力が試される。16年からファンドを始めて、日々の対応を積み重ねるなかで、各地域の有力VCや起業家と信頼関係を築けている」

「チームワークが我々の強みだ。キャピタリスト全員が集まって最低でも週に1回2時間程度、新規投資案件について話し合う機会を設けている。投資会社では上程するまで他の人の動きが見えにくい部分もあるが、チーム内で相談する時間を持つことでそれぞれの経験や知識をもとに助け合えるようにしている」

――3号ファンドでの投資分野について教えてください。

「AIやフィンテック、ブロックチェーンなどデジタル分野での投資を想定している。海外のネットワークも活用しながら、社会課題に向き合うスタートアップに投資していきたい」

「これまでの実績をもとにすると投資件数では6割が海外を占めるが、金額ベースは国内外で半分ずつになるだろう。1件あたりの初回投資時の規模は1億〜3億円程度を見込む。一度の投資だけでなく追加で投資を行うこともある」

――AIではどのような分野に着目していますか。

「AI分野における計算の効率化といったAI技術そのものにも注目しているが、AIを活用した特定領域のサービスに関心がある。AIはインフラ的な要素があるため、産業との組み合わせでどのようなサービスがもたらされるかが重要だ」

――国内のスタートアップがグローバルに活躍するには何が必要ですか。

「業種にもよるが、はじめから海外市場への進出を狙えるような組織づくりが重要だ。当社は海外のスタートアップが日本に進出する際の支援をしているが、日本企業の海外進出の支援も増やしていきたい」

「海外投資家が日本への注目を高めており、投資先やスタートアップを紹介することがある。当社の投資先のZehitomo(ゼヒトモ、東京・千代田)に台湾のDarwin Venture Managementを紹介したが、直近の資金調達では(中心的な役割を果たす)リード投資家となった。投資を受けるにあたってスタートアップ側に国内と海外のやり方の違いなどを説明しているが、こうした支援も重要だ」

海外からの調達にハードル VCの支援が重要に 


海外投資家から資金調達するスタートアップが増えている。上場後の株価の安定など長期的な株主構成を見据えて海外投資家にも株式を保有してもらう狙いがある。Sakana AI(東京・港)など海外の著名VCや機関投資家から大型調達を行う事例も出てきた。
一方、海外投資家からの資金調達は容易ではない。あるスタートアップ経営者は「英語での資料づくりや日本の法制度の説明に苦労した」と振り返る。グローバル経験を持つ人材などが不足している企業でも調達の選択肢を増やせるよう、既存の出資者であるVCによる支援は欠かせない。
(小山美海) NIKKEIスタートアップ Xで最新情報を発信

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