北陸鉄道は18日、2027年3月期に新型コロナウイルス禍前の実績である売上高130億円を目指す方針を明らかにした。同日発表した24年4〜9月期の連結売上高は前年同期よりは8%増えたが、コロナ禍前に比べると13%少ない。今後は金沢市を中心に増える観光客向けの高速バスや貸し切りバスがけん引役になりそうだが、バスの運転手確保が課題になる。
「外国人旅行者の来訪を含めて町のにぎわいは回復基調。だが、事業環境は依然厳しい」。18日、24年4〜9月期の決算発表記者会見に臨んだ宮岸武司社長は現状をこう話した。同期の売上高は前年同期比8%増の59億円、純利益は同29%減の2億6300万円だった。前年同期にあったコロナ関連の補助金がなくなったことが影響している。
営業利益は前年同期比ほぼ横ばいの2億9500万円。売上高の70%強を占める運輸業の営業利益は1億300万円と同34%減少した。コロナ禍で控えていたバスの新車導入といった設備投資で減価償却費が増えたことや、人件費の上昇が響いた。
もっとも、売上高の面では明るい材料もある。金沢地区を中心に増えるインバウンド(訪日外国人)の需要だ。貸し切りバス事業は金沢港に着くクルーズ船客の利用もあり、7億4300万円と前年同期比で16%増加した。
高速バスも同19%増の4億1000万円だった。売上高の半分以上を占め、インバウンドに人気の金沢―高山(岐阜県高山市)線が好調に推移した。金沢―名古屋線の収入も4割増えた。3月の北陸新幹線延伸で金沢―名古屋間の在来線特急がなくなり、乗り換えなしで往来したい人の需要をとらえた。「(新幹線開業で)鉄道運賃が上昇して、高速バスが見直された」(宮岸社長)のも要因だ。
同社の通期決算を見ると、コロナ禍前の20年3月期の売上高は130億円。今後、インバウンドを中心に観光需要が拡大するほか、実施済みの運賃引き上げの効果も想定して27年3月期に130億円水準という目標を掲げた。コロナ禍前のように、生活路線を走るバスや鉄道の収益の厳しさを高速バスなど単価が高い事業で補えれば、利益も伸ばせる。
課題になるのがバス運転手の確保だ。9月末時点の運転手の充足率は、金沢地区の生活路線で92%という。宮岸社長も「事業環境が厳しい」と見る理由の1つとしてバス運転手の不足を挙げた。採用に力を入れており、11月30日には初めて女性限定でスイーツ付きの説明会を開く予定だ。
浅野川線、石川線の鉄道2路線については沿線自治体が線路などインフラの所有・管理を担っていると仮定して自治体が費用を出す「みなし上下分離」への移行で自治体と合意した。バスで安定して収益を生み出せれば、運輸事業全体の持続性が高まる。
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