訪日客などにアピールするため船体を金色とするなど改装を施した駿河湾フェリー

静岡県の清水港(静岡市)と土肥港(伊豆市)を結ぶ駿河湾フェリーの利用が伸び悩んでいる。2023年度の輸送人員は前年度比8%減の9万9849人だった。客足回復へ実施した半額割引が終わり、乗用車と二輪車が落ち込んだ。24年度は船体の改装やバスの復調、トラック運転手の残業規制強化に伴う「2024年問題」が追い風と期待する。

23年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」になり、23年度はほぼ通年で観光需要は回復基調にあった。運航するふじさん駿河湾フェリー(静岡市)は23年4月から旅客運賃を大人で300円安い2000円、乗用車は運転手1人分込みで2300円安い4000円とするなど料金を下げて利用を促す。

しかし、それ以前にコロナ禍で遠のいた客足を呼び戻そうと補助金を使った半額キャンペーンを展開しており23年度から実質的な値上げになった。その結果、乗用車は20%減の2万3149台、二輪車は15%減の3563台になった。バスは団体ツアーの復調で28%増え811台だった。

19年度と比べると乗用車と二輪車は増えたが、バスは4割の水準にとどまる。コロナ禍を経て旅行の主役が団体から個人に移ったほか、コロナ禍で去った運転手が戻らず観光バスの運行本数自体が減っていることが響いている。フェリーの利用に応じて旅行会社などに特別な手数料を払う契約を広げ、バスのさらなる回復を目指す。

重点を置く徒歩乗船者は1万7772人でデータのある20年度以降で最多だが、バスの不振に伴い輸送人員全体では19年度と比べると23%減った。23年度の当初目標は18万人強だったが、その後14万人程度に下方修正し、最終的には10万人を下回った。

3月に富裕層やインバウンド(訪日外国人)にアピールするため、フェリーの外装を金色とし特別客室を設けるなどの改装工事を施した。工事期間に客の取りこぼしも一部あったとする。3月の輸送人員は前年度比58%減の5224人だった。

ただ、運航再開後の5日間で3000人程度と3月全体の過半数を稼ぎ、改装効果に期待は高い。「4月の目標も超えられそうだ。徒歩乗船中心に引き続き誘客を急ぐ」。運航法人の滝浪勇理事長は力を込める。

24年度の輸送人員の目標は12万3000人とコロナ禍前に近い水準とした。徒歩乗船者向けに土肥港周辺の二次交通の整備や、JR東海と組んだキャンペーンを強化する。滝浪理事長は「フェリーを使えばトラックやバスの運転手が運転しなくて済む」と強調し、24年問題も追い風としたい考えだ。

駿河湾フェリーは19年度に県や関係市町が設立した一般社団法人が民間から運航を引き継いだ。燃料費の高騰も加わって23年度は最終赤字とみられ、各自治体は負担金を上積みして経営を支える。収支改善には着実な輸送人員の回復が欠かせない。

(佐伯太朗)

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