興和(名古屋市)は20日、ミノムシが吐き出す糸をシート状の繊維素材として製品化に成功したと発表した。シートを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などと掛け合わせて新材料を開発し、強度を高めた製品をスポーツメーカーなどと共同で展開する。自動車や飛行機の部材への展開も探り、既存の繊維の代替としての活用をめざす。
ミノムシは巣を作るときや移動するときに糸を吐く。ミノムシの行動を制御することで、シート状に糸を吐き出させるという。CFRPにミノムシ繊維を組み合わせると衝撃を吸収しやすく、壊れにくくできる。ゴルフや釣りといったレジャー用品などの用途を想定する。
ミノムシ繊維を活用した素材の新ブランド「ミノロン」も立ち上げる。今後は生分解性プラスチックとの複合材として、環境負荷が少ない強化プラスチックの開発も進める。興和の三輪芳弘社長は「化学繊維や炭素繊維にかわる存在となる可能性を秘める」と強調する。
興和は2017年から農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と共同でミノムシの人工飼育の研究を進めており、室内で多くのミノムシを短期間で育てる方法を確立した。現在は数百万頭を育てており、年間1000平方メートルほどのシートを生産できる。さらなる事業拡大に向けて、増産に数百億円を投じる。
興和の24年3月期の売上高は5739億円。同社は1894年に綿布問屋として創業し、繊維事業を手掛けてきた。今は医薬品の製造やホテルの運営など事業を多角化している。三輪社長は「繊維加工の経験を生かすほか、生産体制の構築へバイオテクノロジー技術の活用も検討する」と強調する。
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